欲しい時にパスは来た?「全然来てますよ」。新天地デビューを飾った乾貴士、かかる期待に応えられるか

2022年08月01日 前島芳雄

右足アウトでピタリと止め、北川のチャンスにつなげる

鳥栖戦で途中出場し、さっそく清水でのデビューを飾った乾。得点にこそ絡まなかったが、随所で“らしさ”を感じさせるプレーを見せた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 今季も残留争いの渦中にある清水エスパルスは、夏のマーケットで北川航也、ヤゴ・ピカチュウ、そして乾貴士という3人のアタッカーを補強。7月31日に行なわれたJ1第23節のサガン鳥栖戦(3-3)では、その2人が揃って初出場し、特に63分に乾、北川、カルリーニョス・ジュニオが投入されたあとの迫力や勢いには目を見張るものがあった。

 それによって2点のビハインドを追いつき、逆転できそうな空気も十分に漂ったが、勝ちきれず最下位に転落したのは非常に痛い。それでも今後に向けての期待感という意味で何か収穫があったのか。大きな注目を集める元日本代表・乾貴士を軸に振り返ってみよう。

 この試合前、清水には新型コロナウイルス陽性者が8人出ていた。そのため前節からスタメンが7人変更され、守備陣のほうが入れ替わりが多かったこともあって、3失点にはその影響が感じられたことは否めない。

 また、鳥栖のシュートは3本とも非常にクオリティが高かった。離脱していた8人も次節には復帰できる見込みなので、守備に関してはそれほど大きな不安材料とはならないだろう。

 だからこそ、3年ぶりに古巣復帰した北川が早々にゴールを決めるなど、攻撃の活性化が強烈なインパクトと共に感じられたことは大きな収穫だった。エースのチアゴ・サンタナとボランチの白崎凌兵も得点し、左SBの山原怜音が2アシストと大活躍。ゼ・リカルド監督が就任してからの7試合で1試合平均2.0点と得点力が増していることは、残留争いのなかでは大きなアドバンテージとなるはずだ。

 そんななかで乾も、得点にこそ絡まなかったが、随所で彼らしさを見せた。
 
 たとえば75分に片山瑛一のサイドチェンジを右足アウトでピタリと止めて北川の初シュートにつなげたシーンは、大いにスタンドを唸らせた。サッカーどころ清水のサポーターは、このようなキラリと光る足もとの技術が大好物だ。

 その他にも、冷静なボールキープはチームに落ち着きを与えるという意味でも頼もしかった。彼の後方でプレーした山原は、乾効果について次のように語る。

「ボールを収めてくれますし、簡単に失わないし、サイドバックの選手からすると預けられる安心感があります。そこで預けて、タメを作ってくれることによって、自分は上がる時間ができますし、他の選手も上がることができる。それが攻撃の厚みにもなるし、カルリーニョス選手、北川選手、乾選手が入ってからは攻撃の厚みが出て、すごく勢いを増したと思います」
 

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