崖っぷちでも、首の皮一枚でも。鹿島の辞書に「あきらめる」はない。伝統的マインドで彼我の差を埋められるか

2022年07月31日 小室功

「ファンやサポーターから温かい声をかけてもらった」

横浜との首位攻防戦で鹿島は0-2の敗戦。勝点差を広げられたが、優勝の可能性が消えたわけではない。リバウンドメンタリティを示せるか。三竿は「希望を探しながら前に進んでいきたい」と奮起を誓う。(C)SOCCER DIGEST

[J1第23節]横浜 2-0 鹿島/7月30日/日産スタジアム

 勝点差を縮める好機のはずだった。だが、その目的は果たせなかった。それどころか、さらに水をあけられてしまい、試合後、鹿島の選手たちの表情は一様に厳しいものだった。

 7月30日、首位・横浜との直接対決に臨んだ。俗に"勝点6"のゲームと言われるとおり、勝つか、負けるか、それによって優勝への可能性が大きく揺れ動く正念場でもあった。

 両者の勝点差は「5」。追いかける2位の鹿島は必勝を期したが、受け入れがたい現実が待っていた。結果は0-2。勝点差は「8」に広がった。レネ・ヴァイラー監督は「ロッカールームでも選手たちに伝えたが、現状では相手のほうが強かった」と、完敗を認めざるを得なかった。

 結果はもとより、ショックの色を隠せない鹿島の足取りを重くしたのはその内容だろう。なかでも両者のシュート数が浮き彫りにする事実は見過ごせない。横浜の17本に対して、鹿島のそれは2本。立ち上がりこそ、チャンスを作ったものの、時間の経過とともに後手に回されるケースが増え、後半のシュート数は何とゼロに終わった。

 彼我の差は何だったのか。キャプテンの土居聖真が言葉を絞り出した。

「(横浜は)ボールを動かせるし、湧き出てくるような攻撃を90分間を通してやれていた。(そういう攻撃に対しても)よく守ることができていた部分もあるけれど、前から行くのか、ちょっと引いてから行くのか、あいまいになってしまった」

 さらに「一言では言い切れない」とも付け加え、目ざしている戦術の浸透度やゲームの運び方、戦力の底上げなど、逆転優勝のために修正すべき課題の多さをうかがわせた。
 
 だが、白旗を上げたわけではない。

「試合後、スタンドのファンやサポーターから温かい声をかけてもらった。(残り11試合で、首位との勝点差8という現実は)確かに厳しいけれど、何とか結果で応えていきたいと思っている」

 覇権奪回に向けての決意は、守備の要として奮闘する三竿健斗もブレていない。

「どんな状況に置かれても下を向かずに戦っていこうと、日ごろからみんなで話し合っている。負けてしまった試合のなかでも(次につながるような)希望を探しながら前に進んでいきたい。そういう部分を自分が姿勢を示すことで、ほかの選手にも伝えていけたらと思っている」

 鹿島の辞書に「あきらめる」という言葉は、やはりない。たとえ、崖っぷちを歩かされようと、首の皮一枚であろうと。

 脳裏に浮かぶのは2007年のJリーグだ。残り10試合で、首位・浦和との勝点差10をひっくり返した成功体験が鹿島にはある。いかにか細くとも優勝への希望が残る限り、自分たちの力を信じて、歯を食いしばって戦っていく。それが鹿島の揺るぎない伝統的マインドでもあるだろう。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)

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