理解に苦しむ森島司の左サイドハーフ起用。いったい何を狙って選手を配置しているのか

2022年07月25日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

何をチャレンジしようとしても上手くいかず

中国戦では左サイドハーフで出場した森島。低調なパフォーマンスに終わった。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 Eー1選手権の中国戦、日本のスターティングメンバーを見て「この11人だと……、まさか森島をサイドハーフ起用するのか?」と危惧した。そして本当に森島司が左サイドハーフで先発したので驚いた。

 確かに森島はサイドハーフの経験がある。だが所属クラブのサンフレッチェ広島では、サイドハーフ(またはウイングバック)で出場すれば低調なパフォーマンスに終始するのがほとんどだった。そこで2020年に行なったインタビューの際、「昨季(=2019年)はシャドーに固定される前まではウイングバックで、サイドで苦戦していた印象があります」と投げかけると、こう返ってきた。

「自分でもそう思いますよ。ギャップで味方からのパスを引き出して、そこから横や斜めからボールを奪いにくる相手をかわすドリブルのほうが得意。サイドで面と向かって1対1を仕掛けるドリブルは、ボランチであまり経験してこなかったので」

 森島は元来、プロ入り前もボランチで育ってきたプレーヤーだ。だから空間認知能力が抜群に高く、バイタルエリアで縦パスを引き出すのも、2列目からの飛び出しで裏のスペースを突くのも上手い。持ち前の攻撃性能をさらに生かすべく、2017年に1列前のシャドーにコンバートして才能を開花させたのは、当時は広島を指揮していた森保一監督だった。だからこそ今回、森島の左サイドハーフ起用に驚いたのである。
 
 案の定、中国戦の森島は低調だった。やはりサイドハーフはプレーしづらそうで、中央に絞ってボールを引き出そうとしていたが、外から中に走るのでは身体の向きも、動き方も、タイミングもすべて変わる。だからどうも味方と息が合わない。

 なんとか苦境を打破すべく森島は次に裏抜けを狙っていたが、中盤でプレーする時とはパスの出し手との関係性も変わってくるので、これまたタイミングが合わない。何をチャレンジしようとしても上手くいかず、もどかしそうに見えた。

 森島のストロングポイントを把握しているはずの森保監督は、いったい何を狙って選手を配置したのか、理解に苦しむ。"日本代表指揮官"が中国戦で披露した采配は、戦術のために選手がいるように感じた。選手のために戦い方を選ぶなら、例えば4-3-3のフォーメーションでインサイドハーフに森島と脇坂泰斗を並べたほうが面白かったと思う。

 広島のミヒャエル・スキッベ監督は、選手たちが秘めているポテンシャルを最大限に引き出すために、最適な戦術を練り上げている。野津田岳人の運動量、森島の2列目からの飛び出しなどを生かすべく、ベストな戦い方をショートカウンターと見出したはずで、実際に22節の京都戦では野津田のアシストから森島がゴールを奪取。推進力ある持ち上がりからクロスを上げた前者も、神出鬼没な動き出しでゴール前に走り込んだ後者も、ストロングポイントを出した得点だった。森島がこれでキャリアハイのリーグ6ゴールをマークした事実は、ドイツ人指揮官が選手の特長を生かしている何よりの証である。

 森島は1週間前の京都戦では得点後に晴れやかな笑顔を見せた。だが中国戦の前半終了後には悔しそうに天を見上げ、うつむき加減で足早にロッカールームへ引き上げ、途中交代時も肩を落としていた。そんな姿を見て、広島担当として彼をチェックし続けていた筆者としては胸が痛かった。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事