【総体】ベンチには愛用の麦わら帽子。小嶺忠敏先生の遺志を受け継ぐ“教え子同士”の対戦は前橋育英に軍配

2022年07月25日 松尾祐希

後半16分に小池直矢が決勝点

長崎総科大附と前橋育英の対戦は立ち上がりから白熱の好ゲームとなった。写真:松尾祐希

[インターハイ1回戦]前橋育英1-0長崎総科大附/7月24日(日)/鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

 高校サッカー界を長きに渡って牽引した小嶺忠敏先生が亡くなられて、早いもので7か月が経つ。多くのサッカー関係者が喪失感を味わったが、島原商、国見で一時代を築き、選手権、インターハイ、国体、高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権大会(現・高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ)でチームを17度の日本一に導いた名将の想いは今も火を灯し続けている。

 7月24日に幕を開けた今年のインターハイ。徳島の地で争われる真夏の祭典において、小嶺先生の教え子同士の対戦が1回戦でいきなり実現した。小嶺先生が最後に指揮を執った長崎総科大附(長崎)と優勝候補に挙げられる前橋育英(群馬)が相まみえた。

 前者は国見時代に指導にあたった定方敏和監督が指揮し、後者は島原商時代の教え子で、インターハイを制して初の日本一を果たした時のキャプテンだった山田耕介監督がチームを率いている。

 小嶺先生の想いを継ぐ両チームの対戦は立ち上がりから白熱し、攻勢を強める前橋育英を長崎総科大附が粘り強い守備で応じる展開となった。試合は0−0で迎えた後半16分に前橋育英がFW小池直矢(3年)のゴールで均衡を破り、そのまま逃げ切って2回戦進出を決めた。
 
 小嶺先生が亡くなってから初めて迎える全国大会。長崎総科大附のベンチには先生愛用の麦わら帽子が置いてあり、それを見た山田監督も思わず昔を懐かしんだ。

「あの麦わら帽子を見ると、ひょこってまた現われるんじゃないかなって思うんだよ。『おーい』なんて言いながらさ」

 きっと先生もこの試合を見守っている――。そうした雰囲気は最後の教え子となる長崎総科大附の選手たちも感じており、普段から気が緩むと先生の麦わら帽子に目をやっていたという。

「先生が亡くなってからトレーニングの緊張感が緩くなる時もあった。その時は小嶺先生の麦わら帽子を見て、先生も一緒に戦っていると感じていた」(長崎総科大附キャプテン・竹田天馬/3年)
 

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