【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「ミラン再浮上に必要なのは“真面目な本田”よりも強烈な個性か」

2015年09月16日 マルコ・パソット

中盤が向上したことでオフェンスの問題がより浮き彫りに…。

誰よりも走るなど、目立たない部分で奮闘していた本田。しかし、それが効果的だったか、あるいは相手にとって嫌なプレーだったか、となると……。 (C) Alberto LINGRIA

 2015-16シーズン最初の「デルビー(ミラノダービー)」は、矛盾だらけだった。
 
「今日、私は今シーズン初めて、選手たちのプレーに満足することができた。ついに私は、自分の望むチームを手に入れたのだ!」――試合後のシニシャ・ミハイロビッチ監督
 
「ミハイロビッチに電話をかけ、昨晩の試合は素晴らしかったと絶賛したよ」――試合翌日のシルビオ・ベルルスコーニ・オーナー
 
 ちょっと待ってくれ、デルビーは1-0でインテルが勝ったのではなかったのか?
 
 しかしよく考えてみると、矛盾は今に始まったわけではなかった。
 
 例えば、ここまで唯一の勝ち試合である第2節エンポリ戦の後、ミハイロビッチは激怒し、ベルルスコーニはミハイロビッチをアドリアーノ・ガッリアーニ副会長とともに家に呼びつけ、状況を説明させている。
 
「アメと鞭」をうまく使いわけてチームを率いるということなのだろうが、今は"アメ"の時期らしい。なぜなら、今のミランを、選手も、監督も、幹部も、マスコミも、そしてミラニスタも実は気に入っているからだ。3節でたったの3ポイント、首位のインテルから6ポイントも離されていようが、それは間違いないのだ。
 
 実際、デルビーでのミランは、確かに今シーズンに入ってから一番の出来であった。集中力があり、自分たちらしいプレーを見せ、狡猾でもあった。
 
 しかしだからといって、魔法の杖のひと振りのように、問題がたちどころに消え去ってしまったわけではない。チームを回すことができるレジスタを、この夏に獲得することができなかったため、今のミランは手持ちの駒で、どうにかやりくりしていかなければならない。
 
 そこでミハイロビッチは、ほとんど忘却の彼方に押しやられていたリッカルド・モントリーボを、またレジスタにと引っ張り出してきた。そして、その試みは当たった。キャプテンは覇気のあるプレーを見せ、怪我から完全に復活したことを証明してみせたのだ。
 
 今、最も大きな問題はオフェンスだ。それはデータも裏付けている。
 
 開幕からの3試合で、ゴール枠に飛んだシュートはたったの7本しかない。セリエAのなかでそれより少ないのは、昇格してきたばかりのボローニャ(6本)だけだ。7本といえば1試合平均たったの2本。オフェンスは、ミランがこの夏に最も金を使ったポジションだというのに……。
 
 ミランは、カルロス・バッカとルイス・アドリアーノの獲得だけで、3800万ユーロを使っている。まあ彼らはどうにかゴールは決めているが(彼らしか決めていない)、それにしても他のFW選手は一体どこにいってしまったのだろうか?
 
 そして当然ながら、本田圭佑のプレーにも注意が集まっている。
 
 本田はデルビーでのベンチスタートが予測されていたが、直近の2日間の練習で急に評価が急上昇してきた。
 
 ミハイロビッチの意図は、はっきりしていた。モントリーボ、ジャコモ・ボナベントゥーラ、そして本田は、今のミランで一番良い足を持っている。この3人をうまく使い、前線に良いボールを出そう――ということだ。

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