マドリーを過小評価するのは愚か。なぜプレーコンセプトが存在しなくても勝てるのか?【現地発】

2022年07月08日 エル・パイス紙

スタイルを巡る論争よりももっと深淵なこと

リバプールを下して14度目のCL戴冠を果たしたマドリー。(C)Getty Images

 昨シーズンのレアル・マドリーのチャンピオンズ・リーグ制覇は壮大なストーリーの完遂であり、その伝説を肥大化させた。どうしてこのような不可解なことをやってのけるのか理解できないアンチ・マドリディスタは呆然と立ち尽くすしかなかった。

 パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リバプールと決勝トーナメントで顔を合わせたいずれの相手にもマドリーは劣勢を強いられた。試合内容では負けていた。何もこれは私だけの意見ではない。多くの識者が同調し、スタッツがその事実を裏付けている。しかし、マドリーはそのすべてに反論にした。そしてそれこそがアンチ・マドリディスタを困惑させ絶望させている要因でもある。

 いずれにせよ、マドリーを過小評価する愚を犯してはならない。なぜならフットボールを過小評価することにもなるからだ。それはスタイルを巡る論争よりももっと深淵なことである。

 マドリーの秘密は、フットボールを形作っている素材を知り、それを例外なくすべて、複雑化することなく、ルールの範囲内で使いこなせる点にある。ある時は試合を動かすために、ある時は瀬戸際で踏ん張るためにその時々で道具箱の中から関心があるものを探し当てる。そしてマドリーはその過程において、決して諦めることはない。

【PHOTO】最多14度目のCL制覇を成し遂げたレアル・マドリー! 歴史に名を刻んだV戦士を一挙に紹介!
 確かにファンは選手たちに絶対的な献身とともに、スペクタクルなプレーを求めている。だからこそビッグイヤーを1度も手にしなかったキンタ・デル・ブイトレは今なお人々の脳裏に生き続け、ジネディーヌ・ジダンのボールコントロールにサンティアゴ・ベルナベウは感嘆の声に包まれた。同じようにチェルシー戦でロドリゴのゴールをお膳立てしたルカ・モドリッチのアウトサイドキックによるアシストは、永遠に我々の記憶に残るはずだ。

 しかし、諦めないことがクラブの鉄の掟である以上、カリム・ベンゼマという芸術家がジャンルイジ・ドンナルンマに猛然とプレッシャーをかけ、パリ・サンジェルマンに巨大な嵐を巻き起こしたこともまた我々は決して忘れないだろう。

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