もう一度、日の丸を背負うために。“新生”櫻川ソロモンが示した成長の証。もっと貪欲に、もっと献身的に

2022年06月27日 松尾祐希

「頑張ることは誰でもできるからこそ、やり続けることが大事」

ポテンシャルを秘めた櫻川。まずはチームでの活躍に専心して、代表復帰を期す。写真:滝川敏之

[J2第23節]千葉 3-1 東京V/6月26日/フクダ電子アリーナ

 少しずつ点取り屋らしい顔付きになり、戦える選手になってきた。チームのために最後まで走り切り、貪欲にゴールを狙い続ける。その決意がプレーにも表われるようになってきた。

 櫻川ソロモンがもう一度、日の丸を背負うべく、新たな姿を見せようとしつつある。

 3-1で勝利した東京V戦で、櫻川の変化を感じさせるシーンがいくつかあった。37分に生まれたチーム2点目の場面だ。見木友哉が左サイドからスルーパスを送ると、タッチライン側から中央に入ってきた秋山陽介が、ペナルティエリア内で馬場晴也に倒されてPKのチャンスを得る。これを見木が決め、千葉がリードを広げるのだが、キッカーを決める際にちょっとした騒動が起こっていた。櫻川も名乗り出ていたからだ。

 櫻川はファウルをもらった秋山とハイタッチを交わすと、一目散にボールを確保。しかし――。見木が駆け寄ってくると、話し合いが始まった。試合前の時点でキッカーは決まっていないが、いつもの流れなら櫻川か見木が蹴るのが慣例。PKの準備が進められる間の1分ほど激しくやり取りをしたが、得点のきっかけを作った見木が蹴ることで決着した。

 この場面について、櫻川はこう話す。

「どうしても(キッカーの権利を)取りたかったですけど……。アキくん(秋山)にボールを出したのはトモくん(見木)だったので、次にチャンスが回ってくるのを待とうと思って譲りました」

 以前であれば、ここまで主張はしなかったかもしれない。ゴールを決めたい――。得点への貪欲な姿勢が表に出てくるようになったのは成長の証だろう。

 守備でもチームのために最後まで走り続ける姿勢を貫いた。終盤には左サイドに流れたボールを懸命に追う。到底収められない状況だったが、スライディングして何とかしようと試みた。そうした献身性も今までにはなかったものだ。

 櫻川も「頑張らないといけないところをやったうえで結果にこだわる。頑張ることは誰でもできるからこそ、それをやり続けることが大事」だと言い切り、表情からは出し切ったという想いが見て取れた。
 
 東京V戦で見せたプレーは間違いなく今後に生きるし、2年後のパリ五輪にも繋がるはずだ。大岩剛監督がU-21日本代表の監督に就任して以降、3月の立ち上げ合宿に招集されてから、その後は一度も名を連ねていないが、代表への想いは強い。

 先日、幕を閉じた U-23アジアカップもチェックし、大会期間中に連絡を取り合っていた東京Vの山本理仁や馬場とは、今節の試合後に言葉を交わして刺激を受けた。

「同い年の選手が集まって戦っているのを見るのは悔しい。だけど、まずはチームで活躍して、そこに呼ばれるようにしたい」とは櫻川の言葉。フィニッシュの精度やシュートを打つ回数は改善の余地を残すが、ゴールへの欲と献身性は高まり、ポストプレーも日々向上している。

 ナイジェリアにルーツを持ち、190センチで94キロというサイズを誇る大型ストライカーが台頭すれば、大岩ジャパンの武器になる。現状に満足せず、櫻川はさらなる進化を目指して走り続ける。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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