なぜマドリーはCLで勝ち続けられるのか。「勝利こそが戦術」だからスタイルを巡る細かい論争は存在しない【現地発】

2022年06月19日 エル・パイス紙

いつの時代も程度の差はあるにせよ後継者が現われた

リバプールを破って14度目の戴冠を果たしたマドリー。(C)Getty Images

 レアル・マドリーは、本来あるべき姿以上の強さを押し付ける。パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティとの死闘を制し、決勝に進出した時点で、運命はもう決まっていた印象すらあった。何しろ今回のリバプール戦の勝利も含めて、目下チャンピオンズ・リーグ決勝8連勝中なのだ。驚異的としか言いようがない。

 キリアン・エムバペのようなビッグスターは周囲にまばゆい光を照らす。それは間違いない。しかし、「マドリーは特別なクラブだ。だから勝利するのは他のクラブより簡単なんだ」とカルロ・アンチェロッティが淡々と語ったように、マドリーには常勝の機運を高める風土がある。

 アルフレッド・ディステファノを皮切りにアマンシオ・アマロ、エミリオ・ブトラゲーニョ、ラウール・ゴンサレス、クリスチアーノ・ロナウドといった名選手がクラブの歴史に痕跡を残してきた。その伝説は永遠に生き続けているが、いつの時代も程度の差はあるにせよ、後継者が現われた。

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 マドリーにおいては、「昨日」は「明日」を意味する。勝利というパスワードが常時設定されている以上、一息つくことは許されない。だからサッカースタイルを巡る細かい論争も存在しない。勝利することが戦術なのだ。

 イケル・カシージャスがいなくなれば、ティボー・クルトワが君臨し、セルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランヌのCBコンビが揃って退団すれば、エデル・ミリトンとダビド・アラバがそのノスタルジーを払拭し、クリスチアーノ・ロナウドが苛立って出て行けば、カリム・ベンゼマがゴールを量産し、ガレス・ベイルとエデン・アザールが使い物にならないのであれば、ヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴが台頭する。

 そしてカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの中盤トリオが安穏としてしまわないように、フェデリコ・バルベルデとエドゥアルド・カマビンガが、バックアッパーの枠に収まらない働きを見せる。

 近年加入した選手たちは、到着時に"銀河色"の絨毯を敷かれて迎えられたわけではない。理由はサンティアゴ・ベルナベウの大聖堂級のリニューアルのため、緊縮財政を選択しているとアナウンスされた。エムバペの到来を待って、補強という時間が止まっているようにも見えた。しかしその間もジネディーヌ、ジダンとアンチェロッティのもとでCLの優勝回数を増やし続けた。

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