連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】“こってりした”東京と鹿島の好勝負

2015年09月03日 熊崎敬

4点すべてが見事なゴールだった。

ナビスコカップ準々決勝、東京対鹿島の第1戦は、ともに持ち味を存分に発揮した白熱の好ゲームだった。 (C) SOCCER DIGEST

 東アジア選手権が最下位に終わってからというもの、Jリーグはレベルが低い、つまらないという声が聞かれるようになった。
 
 だがナビスコカップ準々決勝、2-2に終わったFC東京と鹿島の第1戦は、そんな批判を払拭するような白熱の90分だった。
 
 互いが持ち味を存分に発揮し、東京が得意のサイドアタックからゴールを決めれば、鹿島もまたショートパスとドリブルを巧みに織り交ぜてサイドを切り崩し、ゴールを陥れる。
 
 東京先制、鹿島同点、鹿島逆転、終了間際に東京同点という流れはスリリングで、また4点すべてが立ち上がって手を叩きたくなるような見事なゴールだった。
 
 特に88分に生まれた東京の同点弾は圧巻だった。
 
 徳永が右サイドを豪快に駆け上がり、クロスを送り込む。中央で待ち受ける平山、サンダサのツインタワーに鹿島守備陣が気を取られた隙を突き、小柄な中島が低く抑えた左足ボレーを突き刺した。
 
 ホームの東京にとって、2失点での引き分けは好ましいものではない。だが土壇場で鹿島の勝利を阻止する一撃に、ゴール裏はお祭り騒ぎとなった。試合後もスタジアムに興奮の余韻が残っていた。
 
 東京と鹿島が創り上げた好勝負に、私は改めてJリーグは面白いのだという思いを強くした。
 
 なかでも印象に残っているのが、鹿島の変幻自在の攻撃だ。
 
 遠藤、中村、土居、金崎といった攻撃陣に、SBの西、山本などが敵の懐深くに潜り込み、狭い局面で敵を前後左右に振り回す。これは非常に見応えがあった。
 
 1点目はペナルティエリアの左サイドで山本と中村が鮮やかなワンツーを決め、急角度でゴールライン沿いをえぐった山本が、ニアポスト際に飛び込んだ赤﨑のゴールをお膳立てした。
 
 2点目は右サイドで西、ダヴィが素早くつなぎ、遠藤が得意の角度から左足ミドルを叩き込む。
 
 密集地帯に飛び込みながらも、鹿島の選手たちは簡単にはパスを出さない。敵が飛び込んでくる瞬間に背後へとパスを出す、もしくは身体をきれいに入れ替えて裏に抜ける。このあたりの独特の間合いやテンポは、Jリーグの中でも独特のものがある。選択肢が多く、しかも素直なプレーをしないので、観ているこちらも戸惑ってしまうのだ。

次ページ「荒野の決闘」のようだった遠藤と米本の1対1。

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