代表戦からJリーグへ。サッカー人気を高める好循環を作れるか

2022年06月18日 江藤高志

満員のスタジアムで開催されたブラジル戦

満員の観衆が見守っと日本とブラジルの一戦。多くの反響があった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 ブラジル代表とのゲームを含む日本代表の先の4連戦は、スタジアムで見るサッカーへの期待値を示せたという点で、意味があったのだろうと個人的には思う。代表戦をフックにJリーグへ、という循環の起点になりうるのではないかとも感じた。

 様々な規制緩和がされるようになったが、そもそも、コロナによる厳しい制限を経たJリーグの現状は厳しいように映る。例えばコロナ以前は好調だった各クラブの入場者数の回復力は弱いのではないか。コアな層はスタジアムに戻っており、スタジアムから遠ざかったのはいわゆるライト層と言えるのだろう。

 それでも日本代表の試合であれば、チケットが完売するはずと考えた札幌でのパラグアイ戦の空席を見て、日本代表を取り巻く環境の厳しさも感じた。最終予選のアウェーゲームを地上波で放送できなかったことの意味は精査が必要だろうが、少なかったと感じる「フル代表の最終予選を地上波で見たい!!」という声と合わせ、サッカーというコンテンツの低迷を示しているのかもしれない、などと考えさせられた。

 ただ、サッカーの人気回復にはそれなりの年数が、かかるかもしれないとの覚悟のなか、可能性を感じさせてくれたのがチケットが完売した国立競技場でのブラジル代表戦だ。もちろん、ブラジル代表の人気を背景にした入場者数であることは承知しているが、ライト層が日本代表の戦いぶりに一定の評価を与える試合内容になっていた。枠内シュート0本の結果に世界との差を痛感しつつも、選手たちの奮戦は心に響くものがあり、快勝した札幌でのパラグアイ戦とともに関西2連戦の注目度を高めた効果はあったと考えている。
 そんな今回の日本代表の連戦の中で、普段から追っている川崎フロンターレの出身選手は引き続き存在感を示していた。初戦のパラグアイ戦から見どころを作った三笘薫を筆頭に、ブラジル戦でネイマールに食らいついた板倉滉は、チュニジアとのキリンカップ決勝戦にも先発出場。森保一監督からの信頼感が伝わり、その姿は頼もしかった。

 田中碧は、ブラジル戦では股抜きもされたが、それ自体は戦局に大きな影響を及ぼすようなものではなく、逆に4試合を通して改めて中盤の主要選手としての安定感を示した。

 谷口彰悟と山根視来の両選手は反省すべき点はあったが、それ以上に良かったのはミスを引きずらなかった部分。その上で、例えば谷口は強気なラインコントロールと精度の高いパスを背景に、自らが攻撃の起点となれることを示した。切り替えの速さが直接的な武器になるという意味で、谷口の存在は日本代表の力になるはずだ。

 山根はパラグアイ戦で見せたSBとしてのバランス感覚が良かった。失点に直結するパスミスをしてしまったガーナ戦ではゴールも決めており、ニアゾーンを攻略するフロンターレらしい得点でアピールしてくれた。

 ケガのため、ピッチに立てずに途中離脱した守田英正は残念であったが、総じて川崎フロンターレ出身選手は活躍できた4連戦だったと感じる。

 三笘を筆頭に、Jリーグで活躍した選手が海を渡り、代表チームを牽引する存在になっていることに感慨を覚えつつ、彼らがJリーグで活躍していた2020年、21年の2年間の空白をどう取り戻していくのか。サッカー界全体で考える課題となりそうだ。

取材・文●江藤高志(川崎フットボールアディクト)
 
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