偶然ではなく、狙いが表われたワンシーン。チュニジアの堅守に対し、なぜ鎌田大地はゴール前で“完全フリー”になれたのか

2022年06月16日 河治良幸

クロスに合わせるFWのチョイスは重要

34分の決定機をモノにできなかった鎌田。ショートバウンドのボールに上手く合わせられなかった。写真:塚本凛平 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 日本代表は6月14日に行なわれたキリンカップサッカーの決勝で、チュニジア代表に0-3という屈辱的な敗戦を喫した。

 6月シリーズの4試合目としてショッキングな結果ではあるが、この試合を通じての学びも多かった。1つは試合後にチュニジアのジャレル・カドリ監督が振り返ったように、日本のことをよく研究して対策してくる相手に脆さを露呈しやすいということだ。

 2試合目のブラジル戦は0-1という結果以上の力の差を痛感させられたが、それでも1点差で終えられた理由は、日本が劣勢な状況になることをチームも選手も想定して、耐える準備ができていたことが大きいだろう。

 しかし、チュニジア戦は基本的に日本が主導権を握れる想定で試合を進める中で、中締めをしてくる相手を崩しきれず、逆にハイラインの背後を狙われた。残念だったのは前半、何度かこの流れで危ないシーンがあったにもかかわらず、そこのケアが曖昧なまま後半に入ってしまったことだ。

 確かに3失点に絡んだ吉田麻也の個としての対応のまずさ、そして2失点目に関してはGKシュミット・ダニエルがカバーを躊躇したことも失点につながったと考えられるが、前半にも危険の兆候は見えていたのだ。

 もう1つチュニジア戦に大きく影響したのが、何度かあったチャンスを仕留めきれなかったことだ。興味深いことに、何度もチャンスを作れていた前半はシュートがゼロで、守備を固めてくるチュニジアに苦しんだ後半は6本を記録している。前半は南野拓実の見事なトラップからのシュートがオフサイドになったということもあるが、サイドからのクロスに偏っていたことがそのデータにも表われている。

 この試合でCFを務めた浅野拓磨をはじめ、右サイドから多くのチャンスを作った伊東純也も速いクロスを上げていたが、それでもゴール前で合わなかった。後半の三笘薫に関しても言えるが、サイドに個人で違いを出せる選手が揃っているなかで、クロスに合わせるFWのチョイスは重要だと痛感させられた。

 例えば39分、原口元気とのワンツーから伊東が上げたクロスに浅野が飛び込んで合わせにいったシーンは、チュニジアのディフェンスに防がれてしまった。浅野も攻守両面で奮闘してはいたが、本質的にクロスに合わせるタイプではない。
 
 そういう意味で、上田綺世の試合前の離脱は痛かったかもしれないが、日本の強みを生かすのであれば、今回はメンバー外だった大迫勇也も含めて、クロスのターゲットになれる選手というのは加えるべきだろう。

 ただ、前半にも本大会であれば必ず決めるべきチャンスがあった。34分、長友佑都の縦パスを起点に伊東が右サイドから縦に持ち運んでクロスを入れると、ファーサイドに鎌田大地が走り込んで合わせようとしたが、ショートバウンドをうまく右足で捉えられずに、ボールはゴール左に大きく外れていってしまった。シュートとしても記録されなかったが、明らかにシュートミスだ。

 鎌田はこのシーンのことをよく覚えていないと語っていたが、本大会であればいかなる相手であっても、おそらく1試合に一度、あるかないかというチャンスで、これを決めきれなかったことが、その後の試合展開にも結果にも大きく影響したことは疑いない。

 しかし、なぜ守備の堅いチュニジアに対して、あれだけのフリーを生み出せたのか。そこは単なる偶然ではなく、日本なりの狙いが表われていた。
 

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