「日本のプレス戦術がブラジルを苦しめた」W杯で対戦するスペインの記者は森保ジャパンの“王国戦”をどう見た?「ブレーキになっていた」と低調を指摘した選手は…

2022年06月10日 ダビド・フェルナンデス

日本が成長している証、ポジティブな結果

田中(左)を筆頭に日本のプレスをフェルナンデス記者は評価した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 日本がブラジルに敗れたことを説明するには、2つの視点から考察する必要がある。守備面では、日本はプレッシングもリトリートも非常に良かった。遠藤航とリシャルリソンとの間の軽微な接触プレーがPKと判定され、せっかくの頑張りが台無しとなったが、ワールドカップでも優勝候補の一角に挙げられているブラジルに僅差の敗戦は日本が成長している証であり、ポジティブな結果だ。

 しかし、もう一つの視点である攻撃面では、物足りなさを感じた。守備をすることが精一杯で、攻撃の糸口をほとんど掴むことができなかった。日本のチャンスはほぼセットプレーに限定されていた。

 もちろん日本がW杯でスペインやドイツのような格上のチームと戦うには、粘り強い守備で対抗する以外にない。セットプレーからでも数少ないチャンスをモノにすることができれば、それが自信になり、勝点の獲得にも繋がる。それだけにブラジル戦における日本のボールを持っていない局面での動きは、評価されて然るべきだ。パラグアイ戦よりもベストに近い布陣で臨み、全選手が森保一監督仕込みのプレッシングを見せた。
 
 特筆に値するのは約束事がしっかりできていたことだ。南野拓実はダニエウ・アウベスを、伊東純也はギリェルミ・アラーナをそれぞれケアし、古橋亨梧はフォアチェックをかけるのではなく、カゼミーロへのパスコースを切り、相手の攻撃を限定させた。

 プレッシングのエキスパートである田中碧はフレッジを封じ、インサイドハーフのもう一角の原口元気は、パラグアイ戦で着ていたアーティストのコスチュームから、守田英正ばりのレンガ職人のオーバーオールに着替えるというサプライズを披露。ルーカス・パケタをマークしながら、カゼミーロにボールが渡ると素早い寄せを見せていた。その背後では遠藤が、ネイマールが2ライン(MFとDF)間でボールを受けた時に備えてカバーリングに目を光らせていた。

 ブラジルはこの日本の忠実かつ勤勉な守備に手を焼いた。ネイマールはゴールから遠ざかってプレーする機会が増え、エデル・ミリトンとマルキーニョスはロングボールを蹴らざるを得なくなり、その結果、ボールロストを繰り返した。

 サイドでもベテラン、長友佑都がヴィニシウス・ジュニオールを封殺。中山雄太はラフィーニャを苦しめた。さらに板倉滉はネイマールへのパスコースを限定しながら、右サイドが突破されそうになるとすかさずカバーに回るなど、高い危機察知能力と戦術理解力を見せた。結果的にブラジルも前半は、ロングレンジのシュートかセットプレーからしかチャンスを作ることができなかった。

【画像】田中碧の激しいプレスにネイマールのショーツが脱げる!反響を呼んでいる"下着丸見え"シーン

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