頼りになる男、松木玖生。今大会初出場で一発回答の先制弾。たゆまぬ研鑽の成果を示し、勝利に導く【U-21代表】

2022年06月10日 松尾祐希

指揮官も「これぞ松木」と賞賛

今大会初出場で先制弾の松木。ここ一番で決め切る勝負強さは流石だった。(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)

 やはり、この男は頼りになる。

 現地時間6月9日に行なわれたU‐23アジアカップのグループステージ3節のタジキスタン戦。U-21日本代表は3-0で勝利し、グループ2位でノックアウトステージ進出を決めた。

 あくまで目標は1位突破――。前節から10人の選手を入れ替えたなかでも、首位に立つサウジアラビアを得失点差で逆転すべく、大量得点を目ざした。

 だが、タジキスタンが積極的にボールを繋いできた影響で、狙い通りのゲームプランにできない。65分には三戸舜介(新潟)が相手への激しいチャージで一発退場になるなど、想像以上に難しい試合になった。

 もし、序盤にゴールが生まれていなければ、結果はどうなっていたか分からないだろう。11分に松木玖生(FC東京)が奪った先制点。ここ一番で決め切る勝負強さは流石だった。

 青森山田時代に、徹底的に叩き込まれた"1本中の1本を決め切る力"。チームを勢いづけるゴールは、決して簡単なモノではなかった。山本理仁(東京V)の左CKは、一度は相手DFにクリアされるが、こぼれ球を拾った馬場晴也(東京V)がシュートからパスに切り替えて右に流す。

 ここに構えていたのが松木だった。自らパスを要求した松木は、慌てずに上から被せ、吹かさないように左足でボールを叩く。「枠に飛ばすことだけを考えた」というシュートが見事に決まり、日本に先制点をもたらした。

 思い返せば、いつだって松木は大事な時にゴールを挙げてきた。昨秋に開催されたU-23アジアカップ予選のカンボジア戦では、多くの選手が初戦の難しさを感じるなか、試合の立ち上がりに嫌な雰囲気を吹き飛ばす先制点を決めている。昨冬の高校サッカー選手権決勝でも試合を決定付けるゴールを奪うなど、大事な場面で頼りになる男だった。

 その一方で、このタジキスタン戦まで松木は出場機会がなく、難しい立ち位置に置かれていた。モチベーションの維持は決して簡単ではなく、顔に出さずとも内心は負の感情を抱いていたとしても不思議ではないだろう。

 だが、そうした状況でもプラスに捉え、前向きに取り組めるのが松木の凄さでもある。「出場機会を得られないのは自分の責任」と言い切り、トレーニングからアピールを続けてきた。全メニューが終わった後のフリー練習でも自分と向き合う姿勢は変わらない。一つひとつ確認しながら、シュートを打つ姿があった。

 前半の終了間際のPKは惜しくもポストを叩いてしまうが、キッカーに指名されていたのも周囲からの信頼を勝ち取っていたからだ。
 
「試合前日に行なったトレーニングの段階から責任感を示してくれていた。そういうところが彼が評価されているポイント」と話した大岩剛監督の言葉からも、信頼度がうかがえる。

 準々決勝の相手は韓国に決まった。U-23チームで挑んでくるライバルはイ・ガンイン(マジョルカ)なども招集しており、サウジアラビアと並んで今大会の優勝候補のひとつに挙げられる。

 肉弾戦が想定され、タフな一戦になるのは間違いないだろう。だが、そうした接近戦は最も松木が得意とするシチュエーションでもある。「これぞ松木」。先制弾をこう称した大岩監督の言葉通り、準々決勝でも苦しい時にチームを救ってみせる。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

[試合情報]
AFC U23アジアカップ2022
準々決勝
日本代表 vs 韓国代表
2022年6月12日(日)22時キックオフ
DAZN独占配信

【関連動画】見事なフィニッシュ! レフティ松木玖生の豪快なボレーシュート!
 

次ページ【関連動画】見事なフィニッシュ! レフティ松木玖生の豪快なボレーシュート!

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事