【采配検証】なぜ指揮官は今までシュミット・ダニエルにチャンスを与えてこなかったのか。大胆な舵取りへの転換を期待したい

2022年06月03日 加部 究

「日本の特長を出していかないと世界では戦えない」

足もとの技術、ハイボール処理など安定感あるプレーを見せたシュミット。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[キリンチャレンジカップ]日本 4-1 パラグアイ/6月2日/札幌ドーム

 前回のロシア・ワールドカップにコーチとして参加した森保一監督は「日本の特長を出していかないと世界では戦えない」と感じたそうである。

 その大前提が変わっていなければ、今回のカタール大会ではドイツやスペインが相手だとしても堅守を軸にした腰の引けた戦いは想定していないはず。そして指揮官がW杯の本番で日本の攻撃的な特性を引き出すビジョンを描いていることを考えれば、パラグアイ戦は非常に示唆に富んだ実験になったはずだ。

 まず攻撃的な特長を引き出すには、自陣にこもるばかりではなくコンパクトな陣形を高めに設定する必要がある。またいくら日本代表の平均身長が180センチを超え、世界に伍して戦える高さを備えつつあるとはいえ、GKのロングキックから始まるスタイルが有効だとは思えない。

 せっかくマイボールで始まるリスタートなら、最後尾からしっかりと繋いで運びたい。そう考えたときに、今までシュミット・ダニエルを起用してこなかった理由が見当たらない。
 
 確かに森保監督が第一選択肢として使い続けてきた権田修一も「以前なら蹴ってしまっていたボールを繋げるようになった」と自己評価している通り、総合的にも成長の跡は見て取れる。だがパラグアイ戦でも証明したシュミットの冷静で安定感に満ちたパス回しの域には到達していない。

 一方でシュミットには、ハイボール処理の安定感もあり、前半2度脅かされたブラス・リベロスのミドルシュートと、オスカル・ロメロのFKにもしっかりと対応している。逆に日本のウイークポイントと言われてきたGKに、これだけの資質を備えた選手がいるのに、なぜ指揮官がチャンスを与えてこなかったのかが不思議で仕方がない。

 次にようやくチャンスが巡ってきた伊藤洋輝も、デビュー戦から前半はSB、後半はCBでフル出場させているから、指揮官の期待の高さが見て取れる。

 まず、ほかのSB候補と比べればミドルレンジ以上の位置からのキックの精度が傑出しており、ピッチの左半分でレフティがプレーするメリットを実感できる。もちろん失点に繋がるパスミスを初め、厳しい状況での判断など課題も見えたが、そこは経験値が解消してくれるはずで今後の日本代表の大きな伸びしろを提示してくれた。
 

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