「ビビらず、相手を潰して、自分のペースに」大黒柱不在の最終ラインで、チェイス・アンリは躍動できるか【U-21代表】

2022年06月03日 松尾祐希

トレーニングパートナーとしてA代表候補合宿を経験

ドイツで研鑽を積むチェイス。試合勘に不安も、それを補って余りある期待感を漂わせている。写真:松尾祐希

 U-21日本代表は現地時間6月3日、ウズベキスタンで開催されているU-23アジアカップの初戦に挑む。

 今大会は、2年後に行なわれるU-23アジアカップのポット決めに関わる場となっており、2024年に開催されるパリ五輪の最終予選を兼ねている点を踏まえても早期敗退は許されない。

 そうした状況下で日本は、5月29日から開催地のウズベキスタンで活動をスタートさせ、UAEとのオープニングマッチに向けて順調に調整を続けている。クラブ事情で遅れて現地に入った藤田譲瑠チマ(横浜)、藤尾翔太(徳島)、加藤聖(長崎)も合流済み。冒頭15分のみ公開された6月2日のトレーニングでは、23名の選手が元気な姿を見せていた。

 そうしたなかで迎えるUAE戦において、ポイントのひとつがCBの陣容だろう。馬場晴也(東京V)、鈴木海音(栃木)、チェイス・アンリ(シュツットガルト)、木村誠二(山形)の4選手が招集されている一方で、1月のA代表候補合宿に参加した経験を持つ西尾隆矢(C大阪)が負傷で参加辞退となった。

 3月のドバイカップでも活躍した守備の大黒柱が不在となるが、逆に言えば、他の選手からすれば大きなチャンス。馬場も「このチームではU-16からやってきているので、ディフェンスラインをまとめる役割を任されている自覚はある。そこは意識しつつ、プレーでもチームにプラスになれるようにやっていけたらいい」と話しており、選手たちはモチベーションを高めている。

 誰がピッチに立っても問題はないが、現状では所属クラブでレギュラーとして活躍している馬場が守備の柱を担うことになるだろう。その点を踏まえれば、CBで馬場の相棒を誰が務めるかは試合の行方を左右するだろう。守備センスが光る鈴木、圧倒的なフィジカルで相手を捩じ伏せるチェイス、高さで勝負できる木村。いずれも異なる特長を持っているが、注目したいのはチェイスだ。

 アメリカ人の父を持つチェイスはスケールの大きなプレーが評価され、1月にはトレーニングパートナーとしてA代表候補合宿を経験。その後も各年代の代表合宿に参加し、持ち前の素直さと謙虚さで、驚くべきスピードで成長を遂げてきた。

 183センチのサイズと跳躍力を生かした空中戦の強さに定評があり、U-21代表の一員として戦った今年3月のドバイカップのサウジアラビア戦では肉弾戦やスピードでも互角以上の戦いを展開。序盤は硬さもあったが、ミスを恐れずにチャレンジして時間を追うごとにプレーが安定していった。

 1-0で迎えた終盤は自陣のゴール前で圧倒的な存在感を放ち、大岩剛監督に「全てが荒いなかで、90分のなかで荒さが洗練されていって、ちょっと最後はどこかで頼りにしていた」と言われるまでに、1試合で劇的な変化を見せた。
 
 4月中旬からドイツに渡り、チェイスはシュツットガルトのU-23チームで研鑽を積んできた。移籍してからは試合をこなしておらず、ゲーム勘に不安を抱えているのは否めない。だが、それを補って余りある期待感を漂わせているのも間違いないだろう。

「相手にビビらず、最初から相手を潰して、自分のペースに持ち込みたい。ミスがあっても気にせず、自分がやってきたことを今まで通りやりたいです」

 大岩ジャパンで一気に台頭するポテンシャルはある。現状で先発メンバーは不透明だが、スタートからピッチに立つのであれば、チームの力になれるはずだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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