日本代表への「ワクワク感」って何? パラグアイ戦で“落選組”が見せたエンターテインメントの本質

2022年06月03日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

堂安はクロスで鎌田のヘディング弾をアシスト

パラグアイ戦で好パフォーマンスを披露した堂安。クロスで鎌田の得点をアシストした。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 4-1で勝利した6月2日のパラグアイ戦は、久しぶりに日本代表への「ワクワク感」があったのではないだろうか。

 36分にA代表デビューの伊藤洋輝がビルドアップのテンポを変えるロングキックで先制点の起点になれば、42分には堂安律のアシストから鎌田大地がヘディング弾を奪取。60分には三笘薫が鮮やかなループシュートを決め、相手が疲弊した終盤に田中碧が加点してゲームを締めた。

 4ゴールを生み出した攻撃で特に中心となっていたのは堂安と鎌田だろう。右ウイングに入った前者は横方向に自由自在に動き回り、ドリブル、パス、シュートと果敢に仕掛けまくった。左インサイドハーフに入った後者は縦方向に流動的にポジションを入れ替え、低い位置に下がればビルドアップに参加し、2列目から飛び出せばゴールを決めた。

 しかも堂安は前半にヒールキックで魅せ、鎌田は後半途中にトップ下に移ってからはペナルティエリア内の狭いスペースをドリブルで侵入するなど、両者ともにエンターテイメント性も抜群だった。一つひとつのプレーに札幌ドームが沸いていたから、彼らのプレーに魅了されたサッカーファンは少なくないはずだ。
 
 もちろんチャレンジする分だけリスクはあるのだが、「キリンチャレンジカップのパラグアイ戦」という試合は、堂安や鎌田のような選手を使うにはもってこいのゲームだった。反面、勝てばワールドカップ出場が決まる大一番でこのふたりが招集外だった事実を振り返ると、森保一監督はやはりリスクを回避する指揮官だと改めて感じる。

 勝つためには当然リスクの排除は必要で、実際にワールドカップ出場権を獲得しているので、森保監督の采配を全面否定しているわけではない。手堅く勝利を掴むには極力陣形を崩さないのが得策。システムやポジションを流動的にしなくても、アジアなら個の力で打開できる。

 ただし次のブラジル戦やワールドカップ本大会では、アジア勢とは力関係が逆になる。個の力では相手のほうが上なので、4-3-3の陣形のまま"各駅停車"のショートパスをつなぎ、見ている誰もが想像つくようなサッカーで今までどおり攻めても、簡単に弾き返されるだろう。

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