伊藤洋輝の左SBは伸びしろ抜群。攻撃の水準をもっと上げていく可能性はある

2022年06月02日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

起点となった“キック職人”

パラグアイ戦でA代表デビューを飾った伊藤。上々のパフォーマンスだった。写真●塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 もしかしたら、"左SB"の伊藤洋輝が日本の攻撃の水準をもっと上げていく可能性があるかもしれない。

 4ー1で勝利したパラグアイ戦の前半、左SBに入った伊藤は、5分に左サイドでボールを持った三笘薫の外側を絶妙なタイミングでオーバーラップ。マイナス方向へ低弾道のクロスを送り、堂安律のチャンスを演出した。

 さらに10分には右足で、13分には左足で自陣から絶妙なサイドチェンジ。さらに27のCKではヘディングを放ち、守備時も空中戦でよく競り勝っていた。

 最大の見せ場は36分だ。自陣のビルドアップからボールを受けた伊藤は、テンポを変えるロングボールを浅野拓磨へ供給。そこから原口元気→再び浅野の連係でゴールを奪ったが、起点となったのは紛れもなく、この"キック職人"だった。
 
 伊藤のキックは、日本人離れしている。ワンステップで正確な"超"ロングキックが蹴れるし、ふんわり系というよりもライナー性のボールなので、受け手にボールが渡るスピードが早い。その分、パスをもらったアタッカー陣には余裕が生まれる。球速は若干の違いに過ぎないかもしれないが、高いレベルでは重要な差だろう。

 2019年のU-20ワールドカップ・ポーランド大会を戦ったU-20日本代表の時から、筆者は伊藤のプレーを何度も見てきたが、当時からキックのスキルは群を抜いていた。ボールを持てばいつも必ず最も遠くの選手からパスコースを探しているので、"キックは自分の武器"という自信が、プレーからひしひしと伝わってきた。

 長らく強みとしてきたから、A代表デビュー戦という舞台でも、先制点のシーンでスムーズに浅野へ正確なロングボールを供給できたのだろう。このまま左SBで使い続ければ、例えば左SBから右ウイングへ一発で局面を変えるロングボールも、伊藤ならバンバン通しそうな気がする。それは他の左SBではなかなかできない難しいプレーだと思うし、そんな"キック職人"が最終ラインにひとりいるだけで、もはや攻撃の組み立て方がグンと変わる可能性もあるかもしれない。

 もっとも、広い視野で常に遠くを見ている分、リスクはある。実際にCBに移った後半、伊藤は59分に縦パスを相手DFにカットされ、失点に絡んでしまい本人も「完全に読まれてた。2度とないようにしたい」と反省していた。

 レベルの高い相手の堅守を攻略するには、チャレンジのパスは必要だ。本人にはミスで萎縮しないようにと願っているし、森保一監督には彼の武器を生かしてくれると信じたい。それだけ伊藤の左SBは伸びしろ抜群だと思う。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)

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