日本代表と対戦するセレソン、W杯予選で“最高成績”もブラジル人記者が不安な理由【現地発】

2022年06月01日 リカルド・セティオン

南米予選は14勝3分けで最多勝点

ネイマール(左)やヴィニシウス(右)など好タレントが揃うセレソンが日本と対戦する。(C)Getty Images

 ブラジルはワールドカップにおいて多くの記録を保持している。
 
 最多優勝(5回)、1930年大会からこれまでのすべての大会に出場、最多勝利数(73勝)、最多ゴール数(229ゴール)、平均ゴール数(2.1ゴール)、選手レベルで言えば3つのW杯で優勝したのはブラジルの英雄ペレだけだ。

 予選ながら、それに新たな記録が加わった。南米予選における最多勝点だ。最終節のボリビア戦に勝利したことで、ブラジルは勝点を45とした。これまでの記録は2002年日韓W杯予選でアルゼンチンが挙げた43ポイントだったが、ブラジルは1試合少ないにもかかわらず、その記録を抜いた(アルゼンチン戦が試合途中で中断された)。

 W杯の南米予選は過酷だ。10か国と数は少ないが、総当たり戦で、世界チャンピオンの割合も10分の3と、どの地域よりも高い。2位のアルゼンチンに6ポイント差をつけての首位通過は立派なものだ。

 17試合の内訳は14勝3分け、その引き分けもアルゼンチンと3位のエクアドル、ホームで強いコロンビアが相手だったのだから許容範囲だ。
 
 ブラジルはこの予選の中で進化してきた。その分岐点となったのが2020年の11月のベネズエラ戦だ。試合にはロベルト・フィルミーノが67分に挙げたゴールで1-0と勝利したが、最下位だったベネズエラに終始苦しめられていた。内容もジョゴ・ボニート(美しい試合)を愛するブラジル人にとって許すことのできないプレーだった。

 チームは非難に晒され、過激な意見ではチッチ監督を更迭してマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラを後任に据えようというものまであった。

 チッチもそのままではだめだと思ったのだろう。この試合後に若い世代を多くセレソンの中心に据えるようにシフトしていく。しかし、それには時間が必要だった。それから約半年は変遷の期間であり、紆余曲折の末に、ブラジル開催となったコパ・アメリカではアルゼンチンに決勝で敗れたりもした。

 その変革に大いなる光をもたらしたもの。それが東京オリンピックだった。東京で金メダルをとったチームは、決してスター軍団ではなかったが、それでもジョゴ・ボニートを見せ、多くの優秀な若手が育っていることを教えてくれた。

 そして今、多くの若手がA代表に定着している。アヤックスのアントニー、リーズのラフィーニャ、ネクスト・ロナウジーニョの呼び声高いアトレティコ・マドリードのマテウス・クーニャ、ニューカッスルのブルーノ・ギマラエス、若手で最も評価の高いレアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオール、その同僚のロドリゴ、エバートンのリシャルリソン、リヨンのルーカス・パケタ、アトレティコ・ミネイロのギリエルメ・アラーナ……。

 チッチは実に100人近くの選手をこの予選で試してきた。それがこの記録にもつながり、若くポテンシャルのあるチームが出来上がったと私は思う。課題だったネイマール依存からも脱出したのだ。

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