「矢印は縦方向に」全身全霊のプレーを追求し、“相馬アルディージャ”の逆襲が始まる

2022年05月31日 松澤明美

「アグレッシブな姿勢を見せたい」

相馬アルディージャの初陣は1-1のドロー決着。指揮官は「選手たちは必死に食らいついてやってくれた」と振り返った。写真:鈴木颯太朗

 大宮アルディージャが力強くリスタートを切った。

 5月26日、クラブは霜田正浩前監督を成績不振で解任し、同時に相馬直樹新監督の就任を発表した。昨季は鹿島アントラーズを率い、川崎フロンターレやFC町田ゼルビアで指揮した経験などを買われ、天皇杯を含めて7連戦のさなかの交代劇。相馬監督はわずか2日の準備期間で、28日の5連戦目、初陣の東京ヴェルディ戦へ臨むことになった。

 18試合で4勝5分9敗、勝点17の20位のチームを引き継いだ相馬監督。まずは守備の再構築から着手した。霜田体制では"2点を取って走り勝つサッカー"を掲げながら、1試合平均でほぼ1得点の計19ゴールだった一方、計30失点と1試合で約2失点していた。それが足かせとなって浮上へのブレーキに。改善の兆しはあったものの、進む速度が遅かった。

 1-1の引き分けに終わった東京V戦の2日後、相馬監督は就任会見で、時間を割いた守備指導の重点ポイントについて言及した。

「私が代わってきたなかで、チーム全体に期待を持ってもらうためにもアグレッシブな姿勢を見せたい。無闇にただ取りに行くのではなくて、整理されなかでボールにしっかりとアプローチできる、ファーストディフェンスがしっかりと決まって、そこでしっかりと戦える。カバーがいるから思い切って行けるというような状況を作りたい」

 そうやって短い時間で落とし込んだ戦術を、選手は東京V戦で体現。1点を追う後半は特に顕著で、かつ、コンパクトな陣形は攻撃にも生きた。
 
 ペナルティエリア内に入る人数が増え、前線の選手の孤立感も減少。エースの河田篤秀は相馬監督から「守備のときも攻撃のときも選手の距離を近くする、とずっと言われている」と話す。「ボールを前に運べているときは当然、距離を近くすれば選手たちもああなる」と好影響を口にし、攻守一体とばかりに攻撃の厚みも増した印象があった。

 58分の同点のシーンは、久々にスタメンに抜擢された選手が絡んだ形。"12試合ぶり"の山田将之が起点となって、最後は"8試合ぶり"の奥抜侃志が仕上げた。相馬監督の「チームが変わるためにエネルギーのある選手を使った」との起用に応え、奥抜は「ヤマ君と一緒に頑張りたいと思って、それがゴールにつながってよかった」と振り返る。

 東京V戦は、"相馬アルディージャ"の所信表明だったと言える。

 原博実フットボール本部長は自身が選び、早稲田大学の後輩でもある指揮官の初陣に「ファーストディフェンダーの寄せの迫力がまず違う。距離がみんな近くにいるので、誰かがミスしても、すぐカバーできる」とうなずく。その変化は練習でも見られ、「明らかに強度と激しさと運動量、切り替え、連続性は変わってきている」との手応えを得た。
 

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