【喜熨斗勝史の欧州戦記|第14回】いつまでも5~10年遅れでは…今、日本と欧州の違いを明確にする必要がある

2022年05月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

大きく言えば「技術+戦術+体力」の違い

FC東京の永井とアルベル監督(写真上)、日本代表の森保監督(写真左下)、U-21日本代表の斉藤光毅と写る喜熨斗コーチ

 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。"ピクシー"と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。第14回は、日本と欧州の違いについて語ってもらった。
 
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 日本代表はブラジル代表やガーナ代表などとの親善試合。我々セルビア代表はUEFAネーションズリーグが開幕します。どちらの国にとっても6月は大事な4試合。現在、私は代表キャンプの準備を行なっている最中ですが、充実した日々を送っています。

 4月1日のワールドカップ・カタール大会の抽選会が終わったあとは一時帰国。滞在時にはFC東京の練習を見学させてもらえたり、数多くの試合を観戦する機会に恵まれました。また、教え子がいる関東1部リーグの南葛SCなど様々なカテゴリーの試合会場にも足を運び、いろいろな方と意見交換をする有意義な時間を過ごしました。

 その後はイタリアのフィレンツェで我々の代表選手がいるフィオレンティーナ(ニコラ・ミレンコヴィッチ、アレクサ・テルジッチ)対ユベントス(ドゥシャン・ヴラホヴィッチ)を観戦。フィオレンティーナのヴィンチェンツォ・イタリアーノ監督とも話をすることができました。

 私が欧州に渡って1年以上。今回、日本のサッカーシーンをじっくり見ることができ、また欧州でサッカーに触れるなかで考えました。本気で日本サッカーが欧州各国に追い付きたい、南米の強いチームと対戦しても互角以上に渡り合えるレベルに持っていきたい。そう願うならば「今、日本と欧州の違いを明確にする必要性」があるのでは……と。今までは遠回しに言ってきたのですが、今回はストレートに感じたことを伝えたいと思います。
 
 大きく言えば「技術+戦術+体力」の違いとルール変更による指導者の対応力です。
 
 まず技術の高い選手と言えば、どんな選手を連想しますか。狙ったところに蹴れる。ボール扱いに長けている。確かに技術です。でも、それはサッカーのエッセンシャルな部分なのです。欧州のトップ・トップレベルではもう一段上の「味方のミスをカバーしてあげられる」技術が求められています。
 
 例えば味方のパスがずれて、練習では起こりえないほどシュート角度がなかったとします。それを決めきる力、ミッションインポッシブルなレベルをクリアできるのが高い技術と言われます。

 ひとりで泳ぐことはできても、誰かを抱えながら泳ぐには自分に余力がなければいけないですよね。泳ぐ技術も必要です。そのように難しい状況を克服する技術、それができるだけの体力を育成年代から身に付けさせるのは課題になります。パスミスになったプレーを改善させるだけではなく、ミスパスを修正できないことにもフォーカスしなければ、不確定要素の多いサッカーでは対応できません。

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