ロールモデルは三笘薫。プロより大学を選んだ流通経済大MF川畑優翔。“器用貧乏”ではなく“全てがハイクオリティ”になるために

2022年05月25日 安藤隆人

「なんとか自分で取り返したかった」

「プロの世界に飛び込むのは時期尚早」と考え、大学進学を決意。4年間でさらなるレベルアップを期す。写真:安藤隆人

 関東大学サッカーリーグ1部の第3節(延期分)東洋大戦で、これまで5戦未勝利(3敗2分)の苦しいスタートを切っていた昨年度王者の流通経済大が、念願の今季初勝利を手にした。

 この試合で勝利の立役者となったのが、今年入学したばかりのルーキーMF川畑優翔だった。川畑は0−0で迎えた74分にボランチとして投入されると、直後の75分にチームは失点。未勝利の流れを引きずりそうな雰囲気になりかけていた状況だったが、川畑の目は真っ直ぐにゴールに向けられていた。

 87分、ペナルティボックス内左奥の位置で、同じ1年生のFW清水蒼太朗が相手とのイーブンボールを制すると、川畑は「清水ならあそこはマイボールにしてくれると思ったし、ニアのスペースが空いていたので一気に前に出た」。同じ流通経済大柏高出身の清水のプレーを予測して、シュートエリアに猛然とダッシュ。清水のマイナスの折り返しから冷静にゴールに突き刺し、リーグ初ゴールをマークした。

 すると後半アディショナルタイム4分、左サイドを1年生FW松永颯汰が突破して浮き球のクロスを上げると、川畑は再びペナルティボックス内のスペースに走り込んでいた。

「最初は松永のボールをダイレクトで蹴り込もうと思って走ったのですが、ボールが大きくて、右サイドを見たら(MF光廣)健利がいたので、健利の落としを受けてシュートを打とうと切り替えました」
 
 素早く状況を把握し、身体の向きを左から右に移し替えた川畑は、光廣がヘッドで落としたボールを強烈な右足ハーフボレーでゴールに叩き込んだ。そして次の瞬間、タイムアップのホイッスルが鳴り響いた。

「どのポジションで起用されても、チームのために自分の持ち味を発揮することを考えています。今日はどうしても勝たないといけない試合で、自分が入った直後に失点をしてしまったからこそ、なんとか自分で取り返したかった」

 約20分間で圧巻の2ゴールを挙げた川畑は、試合後にそう振り返った。彼は、FW、トップ下、両サイドハーフ、ボランチと中盤から前ならどこでもこなせるマルチロール。身体能力も高く、ずば抜けたボディバランスとアジリティを持ち、正確なボールコントロールとパス、強烈なシュートも繰り出せる万能型として、高校年代トップクラスのアタッカーだった。
 

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