【浦和】「僕としてはチャンスだと思った」。古巣・仙台の奇策を発奮材料に、武藤雄樹がふた桁ゴールの新領域へ

2015年08月23日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

性格が表われたような小細工なしのまっすぐなCKで、ズラタンの得点もアシスト。

「4年間お世話になった」古巣・仙台を相手にホームで強烈な印象を残した武藤。特別な想いが結実した日でもあった。(C) SOCCER DIGEST

 試合後の記者会見でいくつかの課題を挙げていたペトロヴィッチ監督だが、「2点目はとても美しいゴールだった」と頷いて賞賛した。

【J1 PHOTOTハイライト】2ndステージ・8節
 
 1-1で迎えた37分、ボランチ柏木の縦パスをペナルティエリア内の右寄りにいた梅崎が中央へ折り返す。それをフリーでいた興梠がヘッドで落とす。そこに走り込んだのが、武藤だ。
 
 テンポの良いコンビネーションプレーの前に、文字通り手も足も出せずにいた仙台DFの間隙を縫って背番号19はゴール前へすっと潜り込み、GK六反の動きを見切り、その頭上を越すコントロールショットを放った。
 
 ボールはゴールネットに吸い込まれ、スタジアムは歓喜一色に! 古巣・仙台との一戦。この試合に懸けていた武藤の想いを、サポーターも知っていた。武藤のチャント(応援歌)が、埼玉スタジアムに地鳴りを起こすぐらいに、熱く、力強くこだました。
 
「僕のゴールと言うよりも、みんなで崩したゴール。最後は、ボールに触るだけで良かった。あのコンビネーションは、何回も繰り返してきた形でもある。一連の流れからしっかり完結できました」
 
 武藤は変わらず謙虚に、そう強調した。
 
 もちろんアタッカーとしてのゴールへのこだわりは強く持っていた。なにより、埼スタに初めて仙台を迎えた一戦である。「特別な想い」でピッチに立ったことを、武藤は否定しなかった。
 
「仙台戦とあって、特別な気持ちで臨んだ。気合が入っていた。ゴールを『決めたい』と思っていた。試合後、槙野さんも『やるなあ』と褒めてくれました(笑)」
 
 75分には意外な形で、アシストを記録する。
 
 移籍後初めてCKのキッカー役を担うと、まっすぐに伸びるボールを蹴り込み、ズラタンのジャンプヘッドによるゴールをもたらした。本来であればキッカーを担当する柏木や梅崎はすでに途中交代し、ピッチを去っていたからだ。
 
「最初はゴール前に立っていたら、『おい武藤、行け』と言われたんです。(東アジアカップでプレースキッカーをしており)代表でたくさん蹴っていたのが活きたのかもしれないですね。それに、ズラタンが決めてくれたから、なんとなく良いゴールに見えたんだと思います」
 
 これまた謙遜である。思い切りの良い小細工なしの、かつ抑えのきいたまっすぐなキックは、彼の性格がそのまま表われていたようでもあった。
 
 そして、やはりこの日の武藤がなによりも熱く語ったのが、古巣との対戦についてだった。

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