デンベレの「契約更新拒否騒動」は迷走してきたバルサ側の責任も。現体制がもっと早くできていたら、“最悪の事態”は…

2022年05月16日 小宮良之

遅刻が治らないなど素行面も幼稚だった

ここにきて残留の可能性も出てきたデンベレだが、果たして…。(C)Getty Images

 サッカー選手の言動は、それ自体が批判に晒されることがしばしばある。ただ、それに至る"文脈"というのは必ず存在している。突発的な言動というのは意外に少ない。
 
 フランス代表FWウスマンヌ・デンベレは、FCバルセロナとの契約更新を拒否し、渦中の人になった。

 移籍金や年俸も含めると、5シーズン近くで250億円以上を費やしてきたにもかかわらず、ケガが多く、まともにシーズンを戦えたことはない。どうにか戦力になりつつある今、金の匂いをかぎ取った代理人の進言によって契約更新を拒み、フリーエージェントで移籍する意志を示した。恩義も、義理もあったものではない。

「守銭奴、出て行け!」
 
 その野次は当然だろう。ファン、サポーターによって、その不義理は許せない。関係者も呆れるほどだ。
 
 しかし、これまでクラブもマネジメントでは迷走してきた。場当たり的な強化で、名前だけで決めたような選手獲得で、うまくいかないとすぐに売り払う。数シーズンに渡って、未知を示すことができていなかった。金満体質で膨れ上がった挙句、天文学的な借金も表に出た。

 つまり、親であるクラブが「義」(正しい道)を示すことができていなかった。子供である選手も、親を見習うように悪徳を身につけるようになってしまう。そこには、まさに悪い友人のような代理人が入り込む隙ができる。甘い言葉で選手をたぶらかし、外に連れ出す――。

 デンベレの顛末はそんなところだ。

【動画】契約延長を拒んだデンベレにバルセロナのファンから大ブーイング
 言うまでもないが、プロ選手としてのデンベレが未成熟だったことは一つの要因だろう。はっきりと言えば、遅刻が治らないなど素行面も幼稚だった。人間的に成熟していなかったのだろう。

 しかし、今のバルサの体制がもっと早くできていたら、最悪の事態は避けられていたかもしれない。

 デンベレは、世界最高レベルの技術センスの持ち主である。シャビ監督が率いるようになったバルサでプレーを続ければ、ふさわしい栄光を勝ち取れるだろう。「両利き」と言われる選手はあまたいるが、彼は次元が違う。トップスピードのまま、右でも左でもどちらからでも抜け出し、勝負ができるため、相手は的を絞ることができない。

「このまま続ければ、世界最高の選手になれる」
 
 シャビ監督は太鼓判を押すが、お世辞でも何でもない。事実、デンベレはプレーでブーイングを黙らせるほどの活躍を見せている。契約更新の話も出てきた。十分、残留も考えられるが…。

 一つ言えるのは、恩知らずの移籍をした場合、そこでもらえる報酬が多ければ多いほど、何らかの形で必ず報いを受ける。その点、「ピッチに神様はいる」と考えた方がいいだろう。人を出し抜いても、代償は払うことになる。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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