青森山田に3発勝利。全得点に絡んだ前橋育英10番・高足善の“気づき”「まさかこんなにドリブルできるなんて…」

2022年05月09日 安藤隆人

パスで逃げず、積極的にボールを運ぶ

前橋育英が昨年度王者の青森山田に3-2で勝利。高足は全3得点に絡む活躍を見せた。写真:安藤隆人

 前橋育英の10番を背負うFW高足善にとって、気づきの多い試合だった。

 高円宮杯プレミアリーグEAST第6節、前橋育英はホームに昨年度王者の青森山田を迎えた。この試合でU-19日本代表の小池直矢と2トップを組んだ高足は、立ち上がりから俊敏な動きと足もとの技術を駆使し、高い位置で攻撃のリズムメーカーとして君臨した。

 16分、右サイドに回り込んでボールを受けた高足は、「絶対相手はクロスのブロックをしに足を伸ばしてくると思っていた」と読み、相手の股を通すグラウンダーのクロスを、ニアに飛び込んできた山田皓生に通した。これを山田が冷静にゴールに蹴り込んで、前橋育英が先制に成功する。

 先制点をもたらした高足は、その後、非常に頭脳的なプレーを見せる。前への圧力が強い青森山田が相手とあって、高足はいつもより意識的に低い位置を取って警戒をしていた。

 プロ注目の徳永涼と、怪我の根津元輝に代わってスタメンを張る青柳龍次郎のダブルボランチのポジショニングに目を光らせ、彼らが守備に動き出すと、空いたスペースに入り込んで、相手のダブルボランチの侵入を防いだり、味方が弾いたボールを拾ってはそのままドリブルでカウンターを仕掛ける。ここで高足はあることに気づいた。

「あれ、ドリブルがこんなにスムーズに仕掛けられるんだ」

 いつもよりボールを拾う位置が低くなったことで、ゴールへの距離が広がった。そこで高足はパスで逃げるのではなく、積極的にボールを運んで相手のディフェンスラインの裏を狙うプレーを選択した。

 右サイドに潜り込んでから細かいボールタッチで相手に間合いを詰めさせず、食らいついてきたら相手の逆を突くプレーでさらに深くドリブルで侵入していく。相手にとって、いつしか高足は、一度ボールを渡せば自陣深くまで運ばれてしまうという非常に厄介な存在になっていた。
 
 1−1で迎えた42分、左サイドの山内恭輔からのボールを受けた高足は顔を上げると、再びスペースに入り込んでいく山内の姿を捉えた。次の瞬間、ドリブルで中に入っていくと見せかけて相手を食いつかせてから絶妙なタイミングで山内にパス。山内の折り返しを山田が押し込んで2点目を奪った。

 そして後半の立ち上がり早々の49分、高足は相手GKのパスミスを奪うと、そのままドリブルで独走して飛び出してきたGKを冷静に見て、3点目のシュートを突き刺した。結果、このゴールが決勝点となった。

 66分に右ロングスローの展開から青森山田の三橋春希に決められるが、その後も高足のドリブルは効力を発揮し続け、全ゴールに絡む活躍で3−2の勝利の立役者となった。
 

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