30年目のJリーグ、歴代最強パサーベスト5! 川崎を象徴した“パスの玉手箱”や磐田の黄金期を支えた名手も

2022年05月09日 加部 究

Jリーグで最盛期を迎えた名パサーたちを選出

“J歴代最強パサー”トップ5を選出。左から名波浩、中村憲剛、ラモス瑠偉。(C)SOCCER DIGEST

 2022シーズンで節目の30年目を迎えたJリーグ。その長い歴史の中で、数々の偉大なプレーヤーが日本サッカー界を盛り上げてきた。本稿では、日本リーグ時代から長きにわたり、日本サッカーを追い続けてきたスポーツライターの加部究氏が、ファンの記憶にも残る強烈なインパクトを残した"J歴代最強パサー"を選出。そのベスト5をお届けする。

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【J歴代最強パサー ベスト5】
1位:中村憲剛(元川崎)
2位:ラモス瑠偉(元V川崎ほか)
3位:名波 浩(元磐田ほか)
4位:ビスマルク(元V川崎、鹿島ほか)
5位:遠藤保仁(磐田)
 
 パサーは多士済々の最激戦区である。まず収拾がつかなくなるので、Jリーグで最盛期を迎えた選手たちに絞り込むことにした。

 フェイエノールトの黄金期を牽引した小野伸二(札幌)、セルティックで伝説となった中村俊輔(横浜FC)、早くから欧州が主戦場になった中田英寿(元ベルマーレ平塚)などはもちろん、ポンテ(元浦和)、エジムンド(元東京Vほか)なども除外し、それは世界最高級だった過去を持つジーコ(元鹿島)も同様だ。また名古屋ではフィニッシュに関わる仕事が多かったストイコビッチ(元名古屋)は、個人的にストライカー部門でトップに推している。

 Jリーグを主戦場にしてベスト5に入る選手たちなので、当然クラブは手放そうとするはずがなく、バンディエラに近い存在が並んだ。

 1位は純然たる川崎のバンディエラ・中村憲剛で、そのプレーぶりはパスの玉手箱だった。ビルドアップ段階から渦の中心で絡み、変調も仕上げも長短も自在。スルーパスもサイドチェンジもクロスも絶品だから、当然のようにゴールへのパスも熟達していた。

 タイプは異なるが、パスやゲーム構築の創造性だけを抽出すれば「14番」の先駆者ヨハン・クライフに近いかもしれない。川崎の成長期から同クラブに在籍し、晩年にかけて充実の度合いを加速させた。大卒なのに18年間もプレーし、ラストシーズンも衰えを見せず、これほど引退を惜しまれた選手も珍しい。最後までJリーグと川崎を象徴する選手として輝いた。

 ラモス瑠偉は、もう少しプロ到来の時期が早ければ唯一無二の存在で、それは日本代表でのハンス・オフトのチーム作りが物語っている。東アジアとアジアカップを制し、ドーハの悲劇での幕引きまで、日本代表の大躍進はラモスを抜きには語れなかった。

 だが、アマチュア末期は、さらに多彩なドリブルも含めて躍動し、危険を察知すれば全力疾走で魂を見せつけた。歴史を遡ればリベロからFWまでこなすオールラウンダーで、長身のラモスが繰り出すドリブルや必殺スルーパス、ワンツーは、判っていても相手は読み切れなかった。
 

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