スキャンダルがピッチ上のプレーには全く影響しないピケ。ブーイングを浴びても“実業家”であり続ける【現地発】

2022年05月07日 エル・パイス紙

影響は携帯電話の扱いに気をつけるようになることくらい

音声流出によってスキャンダルが明らかになったピケ。(C)Getty Images

 フットボールは社会現象の一つだ。ボールの行き来がエキサイティングであったり、退屈であったりする以上に、多くのことが起こっている。

 このフットボールの絶大な影響力を誰よりも理解しているのがバルセロナのジェラール・ピケだ。神様のようにプレーし、スポーツとテクノロジーに関連するホールディングカンパニーを経営し、コミッションを受け取ることをヨシとする。

 先日、自身に不都合な事実が明るみに出て、ピケは説明責任を果たすことを余儀なくされた。ミッドウィークにレアル・ソシエダ戦を控え、その影響が心配された。

 しかしピケは、その難しい一戦で巨人のようなプレーを見せた。全ての局地戦を制し、チームを力強く牽引。その姿はまるで11人のメンバーで構成される別の会社を率いているようだった。しかもそれをコンディション不良のなかでやってのけたのだから恐れ入る。

 結局、最後まで戦い抜くことができず、終盤に交代を余儀なくされた。ピケは全てを出し切った。ピッチを後にする際、敵地のスタジアムから一斉にブーイングを浴びた。ファンは、この1週間、世間を騒がせた実業家か、それともソシエダを苦しめた(試合はバルサが1-0で勝利)相手チームの選手か、どちらに別れを告げているのかよく分からなかったのではではないだろうか。

【動画】鎌田のパスからコスティッチがフィニッシュ!フランクフルトのホットラインが奪ったバルサ戦の決勝弾
 実業家のピケが従業員を正しく評価していているのは素晴らしいことだ。"ルビ"(スペイ・サッカー連盟のルイス・ルビアレス会長のこと)と呼ぶその中の1人は、成果をあげると「クラック」と褒め称えられている。

"ジェリ"(ピケの愛称)と"ルビ"と呼び合う2人が、審判について、アンドラ(ピケがオーナーを務めるクラブ、実質3部のプリメーラ・ディビシオンRFEFに所属)を「カタルーニャ以外のグループ」に組み込むことについて話したことは、倫理観に抵触するかどうかという問題以上に進展するとは思えない。

 今回のスキャンダルはプライバシーの侵害に起因しており、影響があるとすれば、今後、2人が携帯電話の扱いに気をつけるようになることくらいだろう。いずれにせよ、ピケがこの奇妙な事件をきっかけにビジネスから手を引くことはないはずだ。

 そして彼が今後も実業家としての活動に勤しもうと、それがファンにとって理解しがたい行動であろうと、両者の関係はピッチ上のパフォーマンスとチームの成績次第で決まるという原則が変わることはない。

 そうこうしているうちに、この記事の内容も最新ニュースによって隅に追いやられることになることになるのだ。そもそもこの一件も発覚当初は一大スキャンダルように取り上げられたが、次第にその扱い方が奇妙な事件へとトーンダウンし、最終的に理解しがたい出来事ということで落着した。今の世の中そんなものだ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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