「伝説は永遠に生き続ける」逝去したオシム氏に母国ボスニアの主将ジェコが綴った想い。“涙の辞任会見”で「命と引き換え」に発した言葉を引用し…

2022年05月04日 サッカーダイジェストWeb編集部

「故郷への愛はかけがえのないものだった」

ジェコ(左)が同胞のオシム氏(右)に追悼の言葉を寄せた。(C)Getty Images, SOCCER DIGEST

 5月1日、元日本監督のイビチャ・オシム氏が80歳で逝去した。かつて指揮を執ったオーストリアのシュトゥルム・グラーツが発表した。

 オシム氏は2003年~2006年までジェフユナイテッド千葉の監督を務め、2006年7月に日本代表の指揮官に就任。ただ、2007年11月16日に脳梗塞で倒れ、退任を余儀なくされた。

 千葉や日本代表で指導を受けたいわゆる「オシムチルドレン」をはじめ、多くの日本のサッカー関係者が追悼のコメントを発表している。もちろん、それは日本だけに留まらない。

 オシム氏の母国、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表の大エースにして主将を務めるインテルのエディン・ジェコは、自身のフェイスブックに「伝説は永遠に生き続ける」という一文を添えて、オシム氏が残した有名な言葉を引用した。
 
 ボスニア・ヘルツェゴビナのメディア『072info』によれば、ジェコが引用したのは、オシム氏がユーゴスラビア代表の監督を務めていた1992年5月23日、スウェーデンでのEURO1992の開幕3週間前に、当時のユーゴスラビアの首都であるベオグラードで開いた"涙の辞任会見"で述べたセリフだ。ユーゴスラビア軍が、故郷のサラエボを攻撃したことに抗議し、大会直前に指揮官の職を退いたのだ。

「辞任は、男が話す最も直接的な言葉だ。私は去る、もう終わったのだ。何度も繰り返すが、私は(テストマッチが行なわれる予定の)フィレンツェにも、スウェーデンにも行かない。これは個人的な決定であり、自由に解釈してもらっていい。理由を説明するつもりはない。あなた方はよく分かっているだろう。これが、あの街(サラエボ)のために、唯一できることだ。あなた方は、私がサラエボ生まれであることを、そして、そこで何が起こっているかを知っているはずだ」

『072info』は、「彼の故郷への愛はかけがえのないものだった。そして、ベオグラードでそのような声明をすることは、命と引き換えになる可能性もあった時だった」と綴っている。

 ジェコのメッセージを報じた『STROGO SPORTSKI』は、この会見時の言葉を「伝説的な声明」と伝えている。ボスニア・ヘルツェゴビナの人々にとって、オシム氏のこの言葉は、「永遠に生き続ける」ものなのだろう。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

【画像】オシム氏の写真とともにボスニア・ヘルツェゴビナ代表ジェコが投稿した追悼の言葉と「伝説の声明」

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