【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「評価急上昇・本田がミランでの地位をより確固たるものとするには?」

2015年08月19日 マルコ・パソット

コッパ・イタリアで本田はまたもや「ヒエラルキー」を覆した!!

昨シーズンには見られなかった、敵を欺く見事な組織プレーから、ペルージャ戦の先制点は生まれた。そして背番号10は、最も必要とされる決定的な仕事を果たした。 (C) Getty Images

 ほんの数日前まで、本田圭佑の夏はあまり満足のいくものとは言えなかった。"鬼軍曹"シニシャ・ミハイロビッチの、ハードな、ハードすぎる練習で、体力的にへとへとに疲れていたからだ。
 
 どこのチームにおいても、この夏のトレーニングの疲労からいち早く回復した選手が、新シーズンレギュラーへの王手をかける。その点において、本田は一歩出遅れていた。
 
 プレシーズンマッチの本田は生気がなく、無気力で、強い意志も感じられなかった。疲労と聡明さが反比例することは、今さら言うまでもない。足が重くて思うように動かなければ、頭も働かない……。
 
 こうして、あまりパッとしない親善試合が続いた後、シーズン最初の公式戦がやってきた。コッパ・イタリアの3回戦だ。相手のペルージャはセリエBに昇格したばかりのチームだったが、一発勝負のため油断は禁物だった。
 
 果たして、その試合で本田は目覚しい活躍を見せた。1ゴール1アシスト、それ以外にも光るプレーが随所にあった。彼の両足は飛ぶように自在に動き、まるでこの試合のために、今までエネルギーを保存していたかのようにさえ見えた。
 
 本田自身も、大満足だっただろう。なにしろ、昨シーズンに引き続き、彼はミランのシーズン最初の公式ゴールを決めたのである(昨シーズンはセリエA開幕戦・対ラツィオで先制点)。
 
 たとえ一時的に疲労困憊しても、ハードな練習を通して、1年間を戦い抜くフィジカルが作られる。経験豊かな本田は、それを知っている。あとは体力が回復するのを待つだけだ。
 
 問題は、監督も同じように待ってくれるかということだが、ミハイロビッチは、本田が良い結果を出せなくとも、ここまで彼を使い続けてきた。これは何も今に始まったことではなく、これまでの監督の下でも何度も見られてきたシーンだ。
 
 本田はある意味、ヒエラルキー覆すことに慣れている。夏の初め、トップ下のレギュラーはジャコモ・ボナベントゥーラで決定のようだった。本田はやっと自分本来のポジションでプレーできることになったというのに、控えに回らなければいけないと思われていた。
 
 しかし実際には、そうならなかった。中国での「デルビー(ミラノダービー)」と、リヨン戦での1時間を除けば、ボナベントゥーラは常にサイドハーフとしてプレーし、本田は若手のスソと交互に、トップ下でプレーをした。
 
 ミハイロビッチの意図は、はっきりしている。本田を継続的にトップ下で使っているということは、このデリケートなポジションには本田の方が適しているとみなしたのだ。

 ボナベントゥーラのスタイルは、本田のそれとはかなり異なる。敵を急襲し、よく動き、よりダイナミックだが、本田のような優れた足とプレーのビジョンは持ってはいない。

次ページいよいよ本領発揮!! 本田が自分を犠牲にする時期は終わった。

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