【FC東京】老獪に映った“宇佐美封じ”。森重のテクニカルファウルは値千金だった

2015年08月17日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「中盤がパワーを残した状態でゴール前まで行ける」(羽生)

前線でタメを作る前田の献身が、中盤の攻め上がりを可能にしている。攻撃の局面で見逃せないファクターだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 正GKの権田がオーバートレーニング症候群に陥り、アンカーの梶山は左足関節捻挫および左ひ骨骨挫傷で離脱中。8月初旬のドイツ遠征で左膝前十字靭帯を断裂した石川は今季絶望で、さらに左SBの太田も右大腿二頭筋長頭肉離れで9月中旬頃まで戦列に復帰できない見込みだ。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・7節
 
 しかし、主力メンバーがバタバタと怪我に倒れながらもFC東京は力強く前進している。J1の第2ステージでは、5節の仙台戦、6節の甲府戦に続き、7節のG大阪戦でも勝利。内容も伴った3連勝で4位に浮上し、首位の鹿島に勝点3差と迫った。
 
 豪雨に見舞われたG大阪戦で目を見張ったのが、その悪天候をモノともしない精神力の強さと抜群のチームワークだった。
 
 精神力の強さが見て取れたのは、47分にパトリックのゴールで追いつかれた後の試合運び。G大阪に流れが傾きかけても決して焦らず、じっと耐えていた時間帯のチーム状況を、CBの森重は次のように振り返っている。
 
「上手くいかない時でも、立ち返れる場所(しっかりと守備から入る)があるのは大きいです。チームとしてなにをすべきか、それをみんなが分かっていましたから、焦りはなかったですね」
 
 実際、押し込まれながらも決定機らしい決定機は与えず、逆にカウンターから絶好機を作り出す。58分、G大阪の両ボランチ(遠藤と今野)が攻め上がった隙を突き、ドリブルでグングンとボールを前に運んだ米本がエリア付近で右サイドの羽生にパス。そして羽生の絶妙なクロスにN・バーンズが頭で合わせ、2-1と勝ち越したのだ。
 
 抜群のチームワークを見せつけたのが、まさにこの2点目だった。殊勲者のひとり羽生が「あそこでスイッチを入れる意識がチームとしてあった」と言うように、ここぞというタイミングで最高のカウンターを仕掛けたのだ。
 
 羽生のポストワーク→N・バーンズの折り返しから、米本が右足で押し込んだ先制弾も、いわばチーム一丸となって決めたゴール。前節の甲府戦では高橋が決勝弾と、ここにきて中盤の選手が効率良く得点に絡んでいるのは見逃せない。
 
 MFの攻め上がりを可能としているのが、前田の献身的なポストワークだ。このベテランFWが最前線で身体を張り、タメを作ってくれるからこそ、「中盤がパワーを残した状態でゴール前まで行ける」(羽生)のだろう。
 

 
 

次ページ宇佐美にはあえて“打たせていた”印象も。

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