「この環境に慣れちゃダメ」。町田在籍12年目の最古参が説く“初心忘るべからず”が身に沁みた

2022年04月28日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「環境に恵まれる前は、逆に雑草魂みたいなものが芽生えていました」

4月28日の練習後、町田の深津が取材に応じた。写真:滝川敏之

 初心忘るべからず。「何かを始めた頃の気持ちを忘れてはいけない」という戒めの言葉だが、知っていても時間の経過とともに抜けがちなのが人の性である。

 2月に新クラブハウスが完成したFC町田ゼルビアは、恵まれた環境下で今季、7節終了時点では2位と好スタートを切った。しかし8節から5試合勝利なしと、ブレーキがかかっている。

 クラブハウス完成から約2か月が経ったタイミングで、充実の環境について、深津康太に話を聞いた。町田在籍12年目、JFLやJ3時代も知る最古参の言葉は、ずっしりと身に沁みた。

「本当に素晴らしいクラブハウスとグラウンドができて、何ひとつ文句はない環境なので、僕ら選手たちはやらなければいけない気持ちがあります。ただ、こうして環境に恵まれる前は、逆に雑草魂みたいなものが芽生えていました。両方を経験させてもらっているのはありがたいですね。もちろん、クラブハウスにグラウンドもあり、シャワーも浴びれて、ケアもできる今の環境が一番良いですよ。でも、この環境に慣れちゃダメ」
 
 深津は今を大事にしていた一方で、初心を忘れないように努めている様子でもあった。その精神が如実に表われていたのは、チームの戦い方に関するコメントである。

「ここ何試合か、攻撃やディフェンスがちぐはぐで、やりたいことは共有できているのに上手くかみ合っていなかった。戦術云々ではなくて、走る、戦う、デュエルに負けない、当たり前をできていなかったなと。横浜FC戦はそこをもっとやろうと意気込んで戦った。やっぱり僕たちは上手いチームではないので、一人ひとりが相手より走って、切り替えを早くして、球際で勝つのが大事だと、改めて気づかせてくれたゲームでした」

 決して、チームが最高の環境に甘えている指摘をしているわけではないだろうが、初心(または原点)とは忘れがちだからこそ、深津は戒めとして口にしていたような気がした。

 4月27日に行なわれたJ2第12節の横浜FC戦では首位に1-1とドロー。悪くない雰囲気で迎えるホームの徳島戦(5月1日)に向けて、深津は意気込む。

「自分たちの強みであるアグレッシブに行くサッカーで、チーム一丸となって同じ方向を向いて勝利にこだわってやっていきたい」

 町田らしさとはなんなのか。徳島戦でも、青のユニホームを身に纏う背番号5を見れば、よく分かると思う。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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