連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】カウンターに屈したG大阪の反面教師

2015年08月17日 熊崎敬

G大阪の試合運びに、日本サッカー界が抱える課題が見え隠れ。

遠藤の縦パスを引っ掛けられ、カウンターを食らって決勝点を献上したG大阪。示唆に富んだ試合内容だった。 (C) SOCCER DIGEST

 サッカーはボールを巧みに操るチームが、いつも勝つとは限らない。4万近い大観衆を集めたFC東京とガンバ大阪の一戦は、そんな真理を改めて実感させられるゲームだった。
 
 多くの代表経験者を抱える両チームだが、ボールをつなぐという点ではG大阪に一日の長がある。実際にG大阪が攻め、東京が守るという展開となり、シュート数でも17対10とG大阪が上回った。
 
 だが、G大阪は勝つことができなかった。
 敵陣でパスをつなぐうちにバランスを失い、何度もカウンターを浴びることになったからだ。
 
 58分に失った2点目は、まさしくそんなゴールだった。
 敵陣で前を向いた遠藤が、密集の中に縦パスを入れる。これを引っ掛けられ、一気に逆襲を食らった。DF3人は4人の敵に押し包まれるような形となり、右へ左へと揺さぶられ、最後にフリーのネイサン・バーンズにヘディングを決められた。
 
 野球と違って攻守が混然一体となっているサッカーでは、攻めているときほど後方に気を使い、守っているときほど一発の逆襲で敵陣を突くような、したたかさを持たなくてはならない。
 
 その抜け目なさを持っていたのは東京だった。
 彼らはしっかりと隊列を整えて敵を迎え撃ち、ボールを奪うたびに鋭い逆襲を繰り出した。東京がカウンターを狙っているのは明らかなのに、G大阪は守りの備えがあまりにも疎かだった。
 
 このG大阪の試合運びに、日本サッカー界が抱える課題が見え隠れする。
 
 この20年間、サッカーの裾野は広がり、技術レベルは確実に上がった。だが近年、年代別の代表チームやフル代表が苦戦を強いられている。それはなぜか。それはフィジカルや球際に弱いということよりも、駆け引きが下手だからだと私は思う。
 
 サッカーは敵がいる厄介なスポーツなのに、安全で快適な社会で生きている日本人は自分のやりたいことしか見えなくなってしまう。要するに私たちは素直なのだ。
 
 豊かな日本社会では、素直でいることが良しとされる。そして素直な子どもたちが、指導者の言うことにしたがってサッカーに打ち込む。上手いのに勝負勘が鈍いのは、こういうところに原因があると思うのだ。
 
「サッカー教室に通う」と言うように、日本ではサッカーをすることが勉強と同じようなニュアンスで語られている。こういうところでは微妙な駆け引きの感覚を学ぶことはできない。
 
 では、どうしたらいいのか。
 私にはアイデアがある。麻雀や花札に励むのだ。
 攻めながら守る、守りながら攻める、敵の癖を見つける、弱みに付け込むといった勝負勘を身につけるのに、これほどいいものはない。
 
 サッカー教室でボール扱いを学び、雀荘で勝負勘を磨く。
 そうなったらJリーグは虚々実々の駆け引きに満ちた、面白いゲームが増えるだろう。私たち日本人はまじめにサッカーに取り組んでいるが、もうちょっと外の世界に目を向けたほうがいいかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
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