「僕の責任で負けた」ミスを認める中村慶太。柏の快進撃の立役者は悔しさを胸に「このままじゃ終わらない」と奮起誓う

2022年04月10日 鈴木潤

中村加入の好影響はピッチ内だけにとどまらず

川崎戦では失点に直結するプレーもあった中村。自らのミスを認め、「絶対このままじゃ終わらない」と気合いを入れた。写真:徳原隆元

[J1第8節]川崎 1-0 柏/4月9日/等々力陸上競技場

 磐田、C大阪を撃破し、勢いを持って臨んだ川崎との上位対決だったが、王者の底力に屈し柏は5試合ぶりの黒星を喫した。

 前半アディショナルタイム、マルシーニョの突破からレアンドロ・ダミアンが決めた決勝点の場面について、マルシーニョに対応した中村慶太は「ボールにチャレンジするんじゃなくてカバーリングで遅らせることもできたと思うので、そこは僕のミス」と振り返り、「僕の責任で負けた」と敗戦の非を自分自身に向けた。

 1月の加入時は「ボランチで勝負がしたい」と言っていた中村。しかしネルシーニョ監督が彼に与えたポジションは右のウイングバックである。ただ、従来のウイングバックとは異なり、中村は状況に応じて中央に入り、ビルドアップに流れを生む役割を担うと同時に、右サイドではマテウス・サヴィオとの連係でアタッキングゾーンでのプレーもこなす。

 今季ネルシーニョ監督が提唱する3バックと4バックを使い分ける可変システムを実践するうえで、中村はチームに戦術の幅をもたらした。

「監督からは、ずっと中にいることは良くないけど、タイミングを見て中に入って自由にやっていいとは言われています。監督も僕の良さを理解してくれているので、そこはやりやすくさせてもらっています」(中村)

 ボールが収まる中村とM・サヴィオが右サイドにいることによって、3バックの一角を務める大南拓磨のスピードを活かした攻撃参加の回数が増え、右サイドアタックは柏の新たな武器と化した。

 昨年まで手詰まりになることの多かったビルドアップに関しても、まだ課題があるにせよ、「慶太くん、(小屋松)知哉くんが入ってきたことで改善された部分は多い」と古賀太陽は昨年との違いを述べている。

 そして中村加入の好影響はピッチ内だけにとどまらない。

 黒星が続き、決してチーム状況が良いとは言えなかった昨年は、シーズン中にチームを離れる者、またはシーズン終了後に移籍していく者が多かった。重苦しいムードに包まれていたそんな停滞感を、中村のポジティブで明るいキャラクターが一変させた。

 練習では誰よりも声を出し、ピッチ外では「常に面白いことを探している」と彼自身が言うとおり、周囲の選手を巻き込んで場を和ませる。試合終了後には若手選手をサポーター前に促すなど、年齢の分け隔てなく誰とも仲良くなれる中村は、早くもチームのムードーメーカーとしての地位を確立した。
 
 川崎戦の失点場面だけを見れば、中村がマルシーニョに背後を取られたことが失点に直結した。だが、シーズン序盤戦を振り返ったときに、快進撃の立役者の一人として中村がチームに与えた影響は非常に大きい。

 開幕戦のPK獲得、福岡戦の決勝点の起点となったパス、磐田戦のアシストなど、勝利を手繰り寄せたプレーの数々を考えれば、中村なくして序盤戦の快進撃はなかっただろう。

「今日ダメだったところを自分たちで考えて、次の試合では何が何でも勝点3を取る。僕自身も絶対このままじゃ終わらないし、絶対にこの失点を取り返さなければいけない」

 川崎に敗れた悔しさを胸に深く刻み、中村は次の試合へと視界を切り替えた。

取材・文●鈴木潤(フリージャーナリスト)

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