ゴールへの強いこだわりを見せる浦和L・猶本光。「うまい選手」から「怖い選手」への変貌

2022年04月07日 佐藤亮太

10年前は自分を『パスの選手』と決めつけていた

浦和Lのトップ下で躍動する猶本。大宮V戦での先制ゴールは秀逸だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 三菱重工浦和レッズレディース(以下・浦和L)所属、今月4日からのなでしこジャパン候補合宿に参加しているMF猶本光。先月28歳を迎えた猶本は、今やすっかり"怖い選手"になっている。

 その一端が今季のWEリーグに見られる。

 浦和Lが敷く4-2-3-1のトップ下で起用される猶本は、上下左右に動きまわり、ボールを捌き、時に前線に顔を出し、シュートを放つ。

 特長のパスに加え、15節・広島R戦(○1-0)ではライン際、相手3選手に囲まれながらも強引に抜け出す力強さを見せた。

 なかでも目立つのはゴールへの意識の高さだ。

 今季リーグ15試合で猶本が放ったシュートは39本。うち中断明け5試合は17本と拍車がかかっている。

 とはいえ今季フリーキックを含め、3得点だが、前節・大宮V戦(●1-2)の先制点は秀逸だった。29分、MF塩越柚歩のスルーパスを受けたDF清家貴子がクロス。これに走りこんで決めた。「練習通り」の自画自賛のゴールだった。

 その猶本、ことあるごとに「得点を決めて勝利に貢献したい」とゴールへのこだわりを繰り返すが、以前はそうではなかった。浦和Lに加入した2012年当時を振り返り、猶本は自身を『パスの選手』と決めつけていた。

 その意識が変化したのが同年、3位で終わったU-20女子ワールドカップだった。

 世界と戦った猶本は「たとえ良いパスを味方に供給しても、決めてくれなければ意味はないし試合には勝てない」と痛感した。

 足りないものは何か? と向き合うなか「まったくのゼロだった」というシュートに取り組んだ。練習や映像で取り組んだが、当時は守備的ボランチ。戦術もあり、試したくてもゴール前に出る機会が限られていた。
 
 その猶本が、ゴールへの意識を高く持たざるを得なかったキッカケ。

 それは2018年から2シーズン在籍したドイツ・フライブルクでの日々だ。

 加入早々のこと。ミニゲームでゴール前にいた猶本は、フリーの選手にパスを出した瞬間に相手選手から『なぜ打たないの!?』と怒られ、衝撃を受けた。練習ではポジションにかかわらず、チームメイトがシュートをバシバシ決めたという。

 また公式戦ではバイエルン・ミュンヘンなど強豪チームと対戦し、互角の内容でも決定力の差で負け、何度も悔しい思いをした。

 さらに加入2年目、トップ下の猶本は監督から「ゴールを決めること。それがあなたに求められるタスク」と強く求められた。

「ドイツではゴールを決める選手が評価される。ゴールを決めることで監督、チームメイト、サポーターから信頼が得られる」と猶本。

 ゴールにこだわらなければならない環境に身を置いたことで、自然と意識づけられるようになった。

「パスを出すだけでは面白くない。ゴール前に迫力を持ってシュートを打ちたい。相手の脅威になるように精度を高めたい」

 10年前「自分はパサーで良い」と決めつけていた猶本光。ドイツでの経験を経て「うまい選手」から「怖い選手」への変貌を遂げた。

取材・文●レッズプレス!!佐藤亮太

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