【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「プレシーズンのミランと本田を評価してみよう」

2015年08月12日 マルコ・パソット

同じ選手による同じようなミスは親善試合でも幾度か見られた。

守備の脆さは昨シーズンと変わらず(写真はバイエルン戦でミュラーのドリブル突破を許した場面)。ミハイロビッチ監督が待ち望んだロマニョーリの加入で、どれだけ改善されるだろうか。 (C) Alberto LINGRIA

 ミランの2015-16シーズンのプロローグは、少しばかり奇妙だ。
 
 親善試合の結果は良好、全てが登り調子であるようにも見えたのに、急にうまくいかなくなって、新シーズンが壊滅的に思えたりもする。
 
 夏の準備期間の試合については、結果が全てではないものの、それでも今後の行方を占う材料にはなる。しかしミランの場合、この先を占おうにも、ここまでの結果があまりに極端すぎるのだ。中間がない……。
 
 具体的に言えば、中国ツアー(インターナショナル・チャンピオンズカップ)の結果は非常にポジティブなものだったが、ミュンヘンでのアウディカップは散々だった。7月半ばのリヨンとの試合も悪かったし、シーズン開始直後のアマチュアチームとの2試合ではさすがに勝利したものの、守備に問題があった。
 
 総括すると、光よりも闇の部分が大きかったと言えるが、監督が変わり、チームを再建している途中であれば、それも致し方のないことかもしれない。
 
 今回は、これまでのプレシーズンマッチを検証しながら、ミランの何がうまく機能し、何が機能していないのかを詳しく見ていこう。
 
 まずはDFから。先日、やっとアレッシオ・ロマニョーリが加入したが(サンプドリア時代の指揮官であるシニシャ・ミハイロビッチ監督は彼をミランのCBに最適の選手と考えている)、先週までのミランの守備陣は、昨シーズンと変わらぬ顔ぶれだった。
 
 同じ役者によるいつものミスを、ミハイロビッチといえども、たった1か月間でなくすことはできなかった。CBのマークミス、もしくは単なる注意力の欠如により、敵のストライカーはやすやすとセンターを抜くことができた。
 
 例えば? リヨン戦の2点目などはその典型だ。リヨンの選手は簡単に、ミランゴール前にいたアレクサンドル・ラカゼットにパスを通してしまった。同じことは、バイエルン戦でのマリオ・ゲッツェのゴールにも言える。
 
 加えて、選手個々のミスも重なった。マッティア・デ・シリオとダビデ・カラブリアは、バイエルンのファン・ベルナト、トッテナムのナセル・シャドリに、自由にゴールを狙われた。

 また、バイエルンのロベルト・レバンドフスキのゴールの際には、アレックスがイージーなクリアを相手選手に当て、トーマス・ミュラーに決定的なパスをプレゼントしている。
 
 つまり、昔からの根深い負の遺産が、新生ミランをなかなか安心させてはくれないのだ。中国でのインテル戦、レアル戦では、1点も失点していないのだが……。
 
 さらに、うまくいっていないところを見ていこう。FWにも、まだ必要な選手が供給しきれていない。マドリー戦、バイエルン戦、トッテナム戦で、ミランは1ゴールも挙げていない。最後に決めたゴールはインテル戦だが(レアル戦でのPK戦は除く)、決めたのはフィリップ・メクセス、DFだ。
 
 つまり、新加入のカルロス・バッカとルイス・アドリアーノは、まだ機能していないということを現実は物語っている。まるきりダメというわけはないが、時間が必要なのは確実だろう。
 
 どちらの選手も、以前のチームではファーストトップだったので(セビージャもシャフタール・ドネツクも4-2-3-1システムを採用)、最後の仕上げだけに専念することに慣れていた。
 
 しかしミランでは、彼らは互いに助け合い、スペースを分け合い、それぞれの役割を覚えなくてはならない。バッカはよりクラシカルなCFとしてゴールを狙い、一方のL・アドリアーノはそれより数メートル後ろの位置からスタートする。

次ページ見極めの時期は終わり、本格的な強化に突入した新生ミラン。

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