単調な攻撃はなぜ繰り返されたのか?個人の強みを生かすには下準備が必要。市川大祐が見た最終予選

2022年03月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

得意な形で勝負しようとする意識が強すぎるために…

市川氏は三笘のドリブルを評価するも、得意な形を出すための下準備の重要性を説いた。写真:田中研治(サッカーダイジェスト/JMPA代表撮影)

 日本代表は3月29日、アジア最終予選のラストマッチでベトナム代表と1-1の引き分けに終わりました。

 24日のオーストラリア戦でワールドカップ出場を決めた直後の試合で、相手は失うものが何もなく、思い切って戦ってくる。難しいところはあったと思います。特に、ワールドカップ本大会へのメンバー入りをかけた戦いと言いますか、吉田麻也選手、山根視来選手以外の先発9人を入れ替えてフレッシュなメンバーで臨んだこともあり、前半は今ひとつの出来だったように思います。

 オーストラリア戦で2ゴールの三笘薫選手はドリブルで仕掛けるシーンも多かったですが、相手が対応して来たことや、5-4-1の守備ブロックでスペースを消されたことで思うような活躍ができませんでした。

 右ウイングで先発した久保建英選手は、前半は孤立し攻撃に上手く絡めず。立ち位置をトップ下に変更した後半は狭いスペースで技術を生かせることを示しましたし、上田綺世選手との距離が近くなったことで、上手くおとりに使ったり、自身が裏のスペースに飛び出したり、良い動きができるようになっていました。

 ただ、試合を通して一番気になったのは、一人ひとりの行動範囲の狭さ。中央部に人数が多かった一方で、サイドが手薄になり、ピッチを広く使えていない点です。そして、連係面が十分でなく、ボール回しが遅く相手守備にギャップを作れていなかったことはありますが、それ以上に単調な攻撃になっていました。
 
 三笘選手の場合は、引いた相手に単騎でドリブルを仕掛けるシーンが増えてしまいました。左サイドバックは東京五輪でチームメイトだった中山雄太選手で、三笘選手の良さを生かそうとスペースを消さないように攻め上がりを自重し、ボールを預けて勝負させるシーンが多かったのですが、オーバーラップしてボールを持つ三笘選手の選択肢を広げるプレーも必要だったかもしれません。

 または、中盤に入った旗手怜央選手、柴崎岳選手、原口元気選手たちが、三笘選手がボールを持った際にもっと絡んでいくことも必要だったかもしれません。相手の守備に隙もあったので、ミドルシュートを打つのも有効な手だったと思います。

 ほかの選手にも当てはまることですが、出場機会に恵まれていない選手たちが自分の強みを生かそうという姿勢は見えました。その一方で、得意な形で勝負しようとする意識が強すぎるため、単調な攻撃になってしまったことも否めないと思います。

 やはり強みを生かすためには下準備が必要です。三笘選手のドリブルを生かすためには、いかに良い状況でボールを持たせるか。また、三笘選手に対峙する相手が迷うほど、周囲の選手が選択肢を提供できるか。そういう部分への配慮やその場の状況判断が必要だということです。

 この予選を通じて攻撃が単調になってしまうことが多々ありました。ひとつの解決策はベトナム戦の後半であったように、システム、選手の立ち位置を変えることや、メンバーチェンジで人を変えることがあります。ですが、ピッチ上で実際にプレーするのは選手なので、一人ひとりが意識していくことも大切です。

 例えば、ミドルシュート。実際にシュートを打つのって結構難しいんですよね。プレー中に相手の隙もあって「今打てたな」と感じることは多いと思います。ですが、それでは遅い。ボールを受ける瞬間に反応できるようなスピードが必要です。そのためには、やはり常にゴールを意識してプレーできているのか、隙があれば常に得点を狙っているのか。そういう日頃からの意識が必要だと思います。
 

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