【采配検証】川崎色の濃いチームで三笘をベンチに置く矛盾。「掴みに出る」メッセージも相変わらず遅かった

2022年03月25日 加部 究

「拓磨がスタメンなので、足もとに入れるよりカウンター」を意識

ピッチ上の修正力は森保監督のマネジメントの賜物。ただ、相変わらず「掴みに出る」メッセージを送るのが遅過ぎた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[カタール・ワールドカップ・アジア最終予選]日本 2-0 オーストラリア/3月24日/スタジアム・オーストラリア

 長距離移動を強いられ、降雨の中で戦う日本にはハンデの多い試合となった。だが結果的には悪条件への警戒心が強過ぎたのか、試合を面白くしてしまったのは森保一監督の選択だった。

 指揮官はCFのスタメンを「浅野拓磨か上田綺世で、ぎりぎりまで悩んだ」という。結局前回ホームでのオーストラリア戦でのオウンゴールを誘発したシュートを「結果を出した」と高く評価して浅野を選択したそうだ。

 だが最前線に浅野を配したこととピッチコンディションも影響してか、選手たちの判断は速いタイミングでの裏狙いに傾いた。実際に遠藤航は「拓磨がスタメンなので、足もとに入れるよりカウンター」を意識したと語っている。

 一方オーストラリアはビルドアップが不安定で、日本はボランチのメトカーフを筆頭に狙い撃ちをしてボール奪取からショートカウンターに繋げる戦いが出来ていた。アンジェ・ポステコグルー監督が指揮して以来ポゼッションを大切にしてきたオーストラリアが久しぶりにロングキックを多用したのは、両チームの力関係からそう割り切るしかなかったからだ。

 こうしておそらくどちらにとっても期せずして試合はオープンな攻め合いになった。しかしこの展開は、明らかに力が劣るのに勝ちに出なければならないオーストラリアに好都合だった。
 
 日本はピッチコンディションも考慮して縦へ速い攻撃を意識したのかもしれないが、スタメンに4人の出身者が占める川崎色の濃度や「敗戦だけを避けたい」状況を考えても、スピードを落としても落ち着いてゲームをコントロールしたかった。

 浅野は何度かオフサイドを取られたシーンを見ても、もともと居残り位置からスタートしており、最終ラインとの駆け引きやフィニッシュの精度には難がある。安定して支配したい試合のスタメンに適任とは言い難かった。

 もちろん日本は崩しの質では相手を凌駕し、前半だけでも4~5回の決定機を築いた。しかしオーストラリアが偶発的に先制してしまう危険性があったことも確かだ。メトカーフが放ったミドルシュートがゴール前に位置する味方に当たってコースが変わったシーンや、後半開始早々のフルスティッチの2度のシュートなどは危うかったし、山根視来のオウンゴールの際のファウルを見逃された可能性もあった。

【PHOTO】敵地・シドニーに駆けつけ選手を後押しする日本代表サポーターを特集!

【W杯アジア最終予選PHOTO】オーストラリア対日本|途中出場の三笘薫が終盤に2発!日本代表7大会連続のW杯出場決定!
 

次ページ柴崎を代える機を逸し敗戦を招いた采配と通底

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事