【担当記者コラム】心に響いた川崎勢の躍動。オーストラリア戦で改めて見えた“目”と“技術”の大切さ

2022年03月25日 本田健介(サッカーダイジェスト)

川崎で何度も見せてきた三笘の圧巻のプレー

ワールドカップ出場を決めた日本代表。試合後には“川崎勢”での記念撮影も。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ペナルティエリアのニアサイドを崩す。

 川崎の攻撃でよく意識されることだが、89分のゴールはまさにその形。右SBで幅を取った山根視来が、エリア内の守田英正へふわりと浮かせたパスを通す。と同時、山根はエリア内右へスプリントし、守田からのリターンを身体を投げ出しながらマイナスのクロス。中央に走り込んだ途中出場の三笘薫が合わせた。オーストラリア守備陣の足を止める素晴らしい連係だった。

 守田はポルトガルで、三笘はベルギーでそれぞれ研鑽を積むが、川崎でコンビネーションを重ねてきた3人の阿吽の呼吸で奪ったゴールであり、原口元気、伊東純也、上田綺世らも周囲で絡んで生まれたゴールでもある。

 追加点は三笘の個人技。左サイドから緩急をつけたドリブルでカットインし、DFを次から次へとかわしてフィニッシュ。シュートはGKのファンブルを誘い、ネットに吸い込まれた。

 海を渡って身体がひと回り大きくなったように感じる三笘だが、あの場面で見せたのは川崎で何度も見せてきた十八番のプレー。まさに"三笘ゾーン"での華麗なステップワークであり、Jリーグでは徹底マークに遭っていたが、情報が限られ、オーストラリアは前に出るしかない状況もあって、その突破力がより輝いた。そう考えると、今予選で三笘を"隠し続けた"森保一監督の名采配とも言えたのかもしれない。
 今や常勝軍団となった川崎では、風間八宏氏による発想の転換で革命が起き、鬼木達監督の指導でさらに相手を見る目と技術力を伸ばしてきた。マークに付かれていても"フリーになる"発想を持った選手たちは、密集する相手エリア内を崩し切ってしまう力を養ってきたのだ。

 三笘のプレーもそうだ。止める・蹴る・運ぶ・受ける・外す。すべての要素を切り離して考えない、川崎アカデミーで学んできたことを実践しているからこそ、ぬかるんだピッチでも滑らかなドリブルを披露できているのだろう。

 かつて風間氏はフィジカルという言葉について、こう語っていた。

「僕らが指すフィジカルとは自分の身体を自由に扱えること。ぶつかり合いを指すわけではない。スーっとボールと一緒に動けることが大事で、ボールが止まっていようが、動いていようが、相手の予想できないタイミングでボールとともに身体を動かせるように」

 そういう意味では、欧州移籍が当たり前になった昨今だが、Jリーグで学べることは多分にある。確かにサッカーの最先端を知るには渡欧が必要で、強度の高いサッカーを通じて逞しさを身に付けられる。

 この日、クリーンシートで味方のゴールを待ち続けた吉田麻也、板倉滉のCBコンビや、攻守の橋渡しになった遠藤航、両ウイングに入る南野拓実、伊東純也らが良い例だろう。

 もっとも"川崎勢"が土壇場で魅せたように、Jの経験が緊迫した最終予選の舞台でも通用することが証明されたのも事実。1点目の崩し、2点目の三笘のドリブルに心奪われた人も少なくないだろう。

"目"と"技術"を養う。川崎が追い求めてきた要素がワールドカップ出場権獲得に寄与した。この事実が他チームを刺激し、日本サッカーのさらなる盛り上がりにつながってくれれば、未来は明るいように映る。

文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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