「シュートを撃てよ!」ピッチの田中碧に飛んだ声。日本代表で躍動するMFはなぜドイツ2部で輝けないのか【現地発】

2022年03月12日 中野吉之伴

「ドイツには優れたカウンターの文化がある」

今シーズンからドイツ2部でプレーする田中。(C)Getty Images

 かつてジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)が、バイエルン時代に「ドイツには優れたカウンターの文化がある」と言っていたことがある。その言葉通り、ドイツ・サッカーでは縦への積極性が何よりの美徳。だからだろう、『チャンスをかぎ分ける。後ろ髪を引かれずにスペースへと駆けだす。そこでの駆け引きで優位に立つ』ことが自然と身についている選手が多い。

 そして、ファンもそんなプレーを選手に要求する。田中碧とアペルカンプ真大がプレーする2部のデュッセルドルフでもそんな様子が見てとれるシーンがあった。

 23節のアウエ戦のこと。この試合、終了間際の90分に途中出場となった田中が、ペナルティエリアすぐ外でパスを受けるシーンがあった。ここでは短いドリブルから試みた左サイドへのパスを相手選手にカットされてしまったのだが、すかさず「シュートを撃てよ!試合まだ終わってないぞ!」とすぐ近くに座っていたファンの声が聞こえたのだ。

 さらにそのあとの自陣味方スローインの場面だ。スペースがあり数的有利。前に走り出す味方とは裏腹に、田中は中盤でカバー。間違っていない。ボールロストした場合を考えたら、スペースを埋めるのは必要な作業だ。でも、飛び出して行ってもよかったのかもしれない。トップ下での起用だ。自陣の人数はそろっていた。自分でゴールを決めるという意欲で前に出て、取られたらまたダッシュで戻ればいい。

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 チームから求められる仕事をそつなくこなすのは当然必要だが、それとは別で自分の持ち味を出そうとする意欲、アピールしようとする心意気にファンは拍手を送る。田中には田中ならではの得意なプレー、あるいは「この場面ではこんな風にしたい」という自分が求めているプレーがあるはずだ。

 日本代表だとあれほど躍動しているのに、デュッセルドルフだとそれがなかなか見られないのは、監督からの戦術的規律、ドイツにおける暗黙の了解を前に、考えすぎてしまっているからかもしれない。

 そのデュッセルドルフは一時期16位にまで順位を下げていたが、ダニエル・ティヌーウ監督就任後は4試合で3勝1分けで一気に勝ち点10を稼いだ。チームの調子は上向きだ。基本システムは、ルーベン・ヘニングスとダニエル・ギンチャクの2トップを前線に配置する4-4-2。そして中盤センターでは、推進力のある力強いプレーで縦にボールを運べるヤクブ・ピオトロフスキと運動量豊富に中盤の底でボールを回収し、左右に展開するキャプテンのマルセル・ソボットカが監督からの信頼を高く得ている。

 24節にレーゲンスブルク戦ではヘニングスが出場停止ということもあり、4-3-3システムを採用し、田中もスタメン起用された。内容的に悪くはないながらも得点が奪えずに、0-0のドロー。『ラインポスト』紙は「特に前半はうまくボールを展開していた。ここ最近のパフォーマンスと比較的明らかに上向いてきている」と田中のプレーを評価しながらも、チーム全体としてオフェンス面で手詰まり感があった点を指摘した。

 ティヌーウ監督も「前半はよかったし、ゴールチャンスもいくつもあった。決められなかったのは反省点だ。そして後半は前線へボールを運ぶことがなかなかできなくなった」と同じような感想を口にしていた。

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