バルサが味わった“2度の凋落”。共通点は…会長主導のずさんな強化戦略

2022年03月11日 小宮良之

1000億円以上をつぎ込み、ほぼ回収できていない

バルトメウ会長(右)体制ではグリエーズマン(左)の獲得など失敗に終わった補強が少なくなかった。(C)Getty Images

 各クラブの選手編成を決める強化担当者たちが、一貫したチームコンセプトで選手を目利きし、交渉し、査定し、文字通り「チームを強化できるか」は、戦いの行方を大きく左右する。勝負の半分はその時点で決定する、といっても言い過ぎではない。

 強化のビジョンがぼやけてしまっていたり、見る目が曇っていたり、ずさんな交渉や査定で選手を呆れさせていたりしたら、チームを強くすることなど到底できない。どれだけ気勢を上げても、底に穴が開いたバケツだ。

 シーズン開幕では、チームがどのような補強をし、チームを再編成したか、を問うべきだろう。Jリーグでも、強化の仕事にもっと目を凝らす時代が来ている。有能な強化がいるチーム、もしくは現場と調和がとれている強化がいるチームは、予算に応じて悪くない順位にいる。サッカーは最もジャイアントキリングが多いスポーツで、勝負は不確定要素も強いものではあるのだが…。

 世界のトップレベルでも、強化の仕事はチームの命運を決めている。
 
 例えばFCバルセロナは21世紀に入ってから2度、大きな凋落を経験した。共通しているのは、会長を含めて強化に筋が通っていなかった点だ。

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 2000年に会長に就任したジョアン・ガスパールはバルサ愛だけはすさまじかったが、クラブを愛玩具のように扱い、自らが強化部長気取りで大きな打撃を与えた。ロベルト・ボナーノ、エマニュエル・プティ、パトリック・アンデション、フィリップ・クリスタンバル、フランチェスコ・ココ、ジオバンニ、ファン・ロマン・リケルメ、ファビオ・ロッケンバック、ハビエル・サビオラなど新しく獲得した選手は悉く失敗に終わった。"バルサっぽい"という感覚だけで金に糸目をつけず、コレクションしたからだ。

 それまでのバルサは1、2位が定位置だったが、2シーズン連続で4位に低迷。3年目は6位まで転落した。ガスパールは2シーズン半だけの会長職だったが、チームを破滅寸前に追いやったと言える。

 2014年にサンドロ・ロセイから会長職を引き継いだジョゼップ・マリア・バルトメウの体制も、20年に辞任するまで長きにわたってチーム力を削いできた。テクニカルディレクターとしては素人同然のロベルト・フェルナンデス、エリク・アビダルを傀儡同然に用い、ずさんな契約を連発。フィリッペ・コウチーニョ、ウスマンヌ・デンベレ、アントワーヌ・グリエーズマンなどに高額年俸も含めて1000億円以上をつぎ込み、ほぼ回収できていない。

 スター選手だけでなく、右サイドバックだけでもドウグラス、アレイシ・ビダル、ネウソン・セメド、セルジーニョ・デストとはずれくじのオンパレード。バルトメウの凶悪さは、自らの進退は極まっていたにもかかわらず、ロナウド・クーマン監督と複数年契約を結び、辞職後もチームに被害を与えた点だ。

 ずさんな強化の末に、現在のバルサの苦境がある。今シーズンはチャンピオンズ・リーグでグループリーグ敗退、スペイン国王杯もベスト8に勝ち進めず、国内リーグも優勝は絶望的だ。

 無軌道な強化戦略は、クラブを激しく傷つける。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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