【指揮官コラム】特別編 三浦泰年の『情熱地泰』|成長と勝利を求めるなら「教える」ことを恐れてはいけない

2015年08月04日 サッカーダイジェスト編集部

できないことへのアプローチが成されていないタイの育成の現実。

タイの13.14歳の選手たちを対象にクリニックを開催。タイの育成年代のレベルを肌で感じる機会となった。

 週末はバンコクへ向かい、タイ・プレミアリーグ(TPL)の試合とディヴィジョン2(3部に相当)の試合の視察を兼ねて観戦。それに合わせてD2クラブの環境、練習場やスタジアムなどをチェックし、上はプレミア、下はD2までのレベルの把握に時間を費やした。
 
 こうしてタイのサッカーに深く関わっていくなかで、僕はさらにこの国のサッカー事情のより根深い部分に触れる機会をもらっている。というのも、僕はいま知人に頼まれ、タイの13、14歳年代の子どもたち各13人、計26人を相手にフットサルコートを使ってサッカースクールを行なっているのだ。
 
 タイのサッカー少年と触れ合うのは初めてであり、彼らの取り組み方や姿勢、そしてレベルというものを日本のサッカー少年との比較で知ることができた。
 
 もちろん1時間半という短い時間のなか、26人を指導するには少し狭いフットサルコート一面での練習では分からない部分は多いし、7人制サッカーでチェンマイ地区では一番実力のあるチームということなのだが、まだまだ日本とのレベルの差は大きいように感じた。
 
 これがTPLのクラブになれば、日本のJリーグにも劣らないチームもある。例えばチョンブリFCであれば日本国内の大会でも優勝してしまうという力を持っているという。チョンブリFCは昨年、日本人スタッフを中心に年間通して安定した力を発揮して良い成績を残したクラブ(TPL)である。
 
 そして育成組織にも力を入れ、元ガンバ大阪のビタヤ氏が育成をまとめているという。しかしそれはTPLのなかでも稀なケースであり、どのクラブでも行なわれているわけではない。ましてや知人に頼まれたチームは、まだまだそういった育成制度の下で行なわれているわけがない。
 
 知人が13歳の息子のために組織した、手作りの街クラブである。ただそういったクラブやチームにもそれなりの魅力というものはあるものだ。
 
 ただ、そんななかで感じたのはやはり基本技術の差だ。個人がしっかりしたテクニックを身に付けていない。根本的なところなのである。そうした技術は、個人が辛抱強く、コツコツと積み重ねていかなければ身に付かないものだ。悪く言えば「つまらない」練習をやっていないのである。
 
 タイでは、概ねできないことへのアプローチがなされていない。
 
 例えばリフティングだ。1回しかできない子どもができようになるにはどれほど大変か。やってもやってもできないのだから。あるいは体力のない子どもに体力をつけるためにマラソンをさせる。これほど嫌な練習はないだろう。
 
 13、14歳でありながら、そういった個人が会得しなければいけない基本的なことが足りないと感じた。きっとやっていないのだろう……。

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