「爆発音で目が覚め、チームとは音信不通」ウクライナに取り残されたブラジル人選手に母国記者が直接取材。涙ながらに訴えた過酷な現状「誰を頼ればいいのか…」

2022年02月26日 リカルド・セティオン

チーム幹部、スタッフ、通訳らはみな消えてしまった

シャフタールのマイコンらブラジル人選手はウクライナに取り残されたままになっている。(C)Getty Images

 現在ロシアが侵攻中のウクライナのリーグには、95人の外国人選手が在籍している。そのうちの30人、実に30%以上はブラジル人だ。彼らはいま、全員がウクライナに取り残され、脱出のめども立たずSNSで窮状をうったえている。

 ブラジルの次に多いのはクロアチアの7人だが、彼らは全員いち早く国外に脱出している。ジョージア、スロベニア、ベラルーシの選手も4人ずついるが、彼らはほぼ隣国であり、母国に帰ることができた。

 そんな中で完全に取り残されてしまったのがブラジル人選手たちである。彼らの多くはドルで支払われる給料にひかれて、ブラジルからある日突然飛行機でウクライナに連れてこられた若者たちだ。言葉もわからなければ、土地勘もない。

 力となってくれるはずだったチーム幹部、スタッフ、通訳らはみな消えてしまった。連絡もつかない。彼らも自分たちのことで手いっぱいなのだろう。百歩譲ってそれは仕方ないとしても、無責任なのはその前の段階である。
 
 数日前から、ロシアのウクライナ侵攻はほぼ確実と言われていた。しかし選手たちはチームから「大丈夫だ、なにかあったとしても国境付近でちょっとした紛争があるだけだから」と言われていた。

 ウクライナ・リーグは、12月からの冬期休暇を経て、まさに2月24日に再開する予定だった。選手たちは数日前まで今週末のリーグが行われると信じ、練習を続けていたという。

 ブラジル人選手の多くは、普段からそれほどニュースをチェックしていなかったはずだ。国際情勢にもうとい。クラブに言われたことを、精査することもなく鵜吞みにしていしまったのだろう。

 例えば、シャフタールのイスラエル代表マノル・ソロモンは危険と見るや、車とバスを使ってポーランドに脱出している。現在、唯一安全な国境はポーランドだけである。

 ブラジル大使館に助けを求めたが、彼らもどうしようもできない。キエフまで自力で来ればポーランド国境までバスを出すと言われていたが、どうもそのバスも出ないようである。しまいには「大使館には来ないでください。我々は何もできません」とまでアナウンスしたという。

 困った選手たちはとにかく一か所に身を寄せ、そこからブラジル政府へ助けてくれるようSNSで訴えている。

 キエフのホテルにはディナモ・キエフとシャフタールの2チームの選手計12人と、幼い子供を含むその家族が集まり、「我々の置かれている状況は深刻です。どうやって国外に出脱出できるかわかりません。ホテルに缶詰め状態です」と訴えた。

 主力MFマイコンの妻はブラジルでも有名なインフルエンサーで、彼女も涙ながらにニュース番組のインタビューに答えている。

【動画】有名なインフルエンサーであるマイコンの妻も窮状を訴える
 

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