【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「現在のミランにとって本当に必要な存在とは?」

2015年07月29日 マルコ・パソット

本田はデルビーで“下克上”のチャンスを活かせずじまいに…。

まさに及第点とも言うべきプレー内容だったデルビーでの本田。ポジション争いに身を置いている状況では、インパクトに欠けるものでもあった。 (C) Getty Images

 真夏の「デルビー(ミラノダービー)」は、パラソルの下で来シーズンに夢を馳せることぐらいにしか役に立たないといわれる。
 
 7月25日、ほとんど練習の延長のようだったようなインテルに対し、ミランは現時点で最高のメンバー(もちろん全ては準備段階だが)を揃えた結果、中国・深センで行なわれたデルビーで1-0の勝利を飾った。
 
 もっとも、勝ち負けは関係ないとはいえ、デルビーはデルビー。負けるよりは勝つほうがいい。それに、全く役に立たない一戦というわけでもない。これを見て、監督や首脳陣はどのポジションに補強が必要なのかも理解することができる。

 そして何よりまず、宿敵インテルを躓かせられたことで、サポーターの心象を良くしたことだろう。
 
 ミランが中国ツアーに出発する前、シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーは、わざわざヘリコプターを飛ばしてミラネッロに駆けつけ、選手たちに訓示をたれた。
 
「諸君には、是非良いところを見せてもらいたい。中国には約1億300万人の、そしてアジア全体では2億3000万人のミラニスタがいるのだ!」
 
 ベルルスコーニは選手たちの感情に訴えたわけだが、言葉の裏には、別の思惑も見え隠れする。アジアのマーケットへの興味だ。タイ人のミスター・ビーと提携したこともあり、ミランの目は今、アジアに向いている――もちろん金儲けの場所としてだが……。
 
 そのミスター・ビー氏への正式な株式譲渡は、8月の頭に行なわれるといわれている。金額は約4億8000万ユーロになり、ベルルスコーニは多少の不安とともに、その日を待っている。
 
 さて、話をデルビーに戻そう。ここ数年、ミランは夏の親善試合ではいつも、散々な結果に終わっていた。オーナーがわざわざ選手たちに念を押しに来たのも、そういう背景があったためだ。だから、デルビーに勝ったことは、ミランにとっては確かに朗報だった。
 
 しかし、本田圭佑にとっては、複雑な思いの残る一戦だった。彼はこの試合でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたが、それはアジア向けのサービスだったように感じる。
 
 本田は前半の45分間プレーし、その後はジャコモ・ボナベントゥーラと交代しているが、トップ下としての働きでは、明らかにボナベントゥーラのほうが上だった。
 
 元々、このポジションでのヒエラルキーはまずボナベントゥーラが上におり、本田は現時点でナンバー2だ。
 
 この試合は、本田が"下克上"を起こす良いチャンスだったが、彼はそれをうまく活かすことができなかった。フィジカルコンディションはまあまあだったが、ひらめきもなく、光ったプレーは数回というだけ……。まだまだ、練習が必要といった感じだ。
 
 それでも、チームとして見た場合、このふたりが鎬を削るトップ下のポジションは安定していると言える。というのも、ミランには他に、補強が必要なポジションがたくさんあるからだ。

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