【喜熨斗勝史の欧州戦記|第10回】松木玖生に「もったいない」という感情を抱いた理由。セルビアにおける16から18歳の実情とは――

2022年01月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

自分よりも上手い選手と練習や試合をしないと

喜熨斗コーチが、帰国した際に観戦した高校選手権について語った。

 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。"ピクシー"と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。第10回は、正月に開催された高校サッカー選手権で感じたことから、「日本サッカー界がこうなっていければ良いな」という希望について語ってもらった。
 
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 明けましておめでとうございます。今年はカタール・ワールドカップイヤー。年始は妻の姉が住む京都に挨拶に行き、清水寺や平等院鳳凰堂など日本文化のきめ細やかさ、自然と調和した美しさなどを堪能しました。セルビア代表コーチをするなかで、私自身が日本人として大事にしていくべきモノを改めて認識させてくれた有意義な時間となりました。

 正月の風物詩といえば、今年は十何年ぶりに高校サッカーの決勝戦をライブ観戦する機会にも恵まれました。ここから話すことは、決して提言ではありません。欧州至上主義でもありません。ただ、セルビアを拠点とする私自身が"日本サッカー界がこうなっていければ良いな"という希望や願望であります。
 青森山田高も大津高もオーガナイズされていて素晴らしいチームでした。そのなかで今季FC東京に入団する松木玖生選手を見ながら出てきたのは「もったいない」という感情です。

 20年以上のコーチ経験から自分よりも上手い選手と練習や試合をしないと成長速度が早まらないというのは肌で知っています。実際、セルビアでは16から18歳の間に他の欧州国に積極的に遠征し、自分たちよりも強い相手やアイデンティティの違う相手との対戦を多く組むようにしています。

 これは陸続きの欧州と、隣接する国がない日本では物理的に埋めようがない話なのですが"サッカーで生きていく"と決意している選手は、そうした環境を自ら作っていく、飛び込んでいくほうが将来的な成長度合いを大きくするのではないでしょうか。

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