【FC東京】空気を読めていなかった高橋へのイエローカード

2015年07月20日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

見方によっては、勝ちに等しいドローだ。

“ダウン寸前”の状態でプレーを続けた高橋。警告を出されたのは、残念でならない。写真:田中研治

 バタバタと選手がピッチに倒れていく。
 
 35分には相手のタックルを食らって左足を負傷したボランチの梶山が、前半のアディショナルタイムには右足に違和感を覚えた左SBの太田が自ら途中交代を申し出る。そして──。
 
 交代枠を使い切った後の68分には、ボランチの高橋が顔面打撲でピッチの外へ。以後も高橋は意識が朦朧としたような状態になりながら「本能でプレーしていた」(石川)が、こうしたアクシデントに加えて猛暑にも襲われたFC東京はいわば瀕死の状態で戦っていた。
 
 にもかかわらず、我慢強く耐え抜いた。
 
 見た目が守備的な3-5-1-1の布陣で臨んできた山形がしかし、ピッチで展開したのは"弱者のサッカー"ではなかった。しっかりと取りどころを定めて、奪ったボールをCFのディエゴとセカンドトップのR・フランクを軸にした鋭いパス回しで敵陣まで運んでいったのだ。
 
 FC東京U-18出身で味スタでの一戦に気合い十分だった宮阪も、ディエゴやR・フランクに負けまいと5分にはFKからゴールを強襲。惜しくもポストを叩いたが、そんな彼の魂も乗り移った山形は前節の浦和戦でのドローがフロックではないと主張するかのように、堂々と振る舞っていた。
 
 山形にペースを握られる時間帯が多かったFC東京は、残念ながら第1ステージに2位に食い込んだほどの強さは披露できなかった。誰が見ても分かる決定機は、前田のスルーパスに抜け出した中島がGKと1対1になった22分の場面のみ。消化不良の試合とバッシングされても不思議ではない試合だった。
 
 昇格組の山形に、しかもホームで引き分けたのだから、決して満足の行く結果ではない。米本の「勝点3を獲らないといけないゲームだった」というのは、紛れもない本音だろう。しかし、この日の山形のハイパフォーマンス(ゴールこそ奪えなかったが)を考えれば、負けても不思議はなかった。
 
 相手の動きが鋭いうえに、キーマンの太田と梶山を失った。しかも、高橋は後半途中から"ダウン寸前"の状態だったのだ。言い過ぎかもしれないが、見方によっては勝ちに等しいドローとも捉えられる。

次ページルールは重要だが、あの場面は口頭注意でも十分では?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事