「部活動できない時期が相当長かった…」。それでも桐光学園に粘った西原は“グッドルーザー”だ【選手権】

2021年12月30日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「結果では負けてしまったんですけど、しっかりプレーで表現しました」

キックオフ前に円陣を組む西原イレブン。桐光学園に惜敗も、堂々たるパフォーマンスを披露した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権1回戦]桐光学園1-0西原/12月29日(水)/等々力陸上競技場

「桐光学園さんは強かった。結果は負けましたけど、ウチの選手たちはこれまでで一番粘り強い試合をしてくれた」

 桐光学園(神奈川)に0-1で惜敗した西原(沖縄)の玉城真哉監督は、開口一番に教え子の奮闘を労った。相手に「押し込まれもした」と認めつつも、「よく粘った。"らしい"サッカーできた」としきりに選手たちを讃えたのにも理由がある。

「この子たち、部活動できない時期が相当長かった。なので、公式戦で一戦一戦成長してここまで来れたかなと思っています。直近のトレーニングマッチでも課題ばっかりで、今日も課題のほうがいっぱいあるんですけど、そんななかで、やれることをやろうと。 粘り強く、最後まで1点を取りに行くところは、全員が共通してやってくれた」

 新型コロナによる緊急事態宣言下で沖縄県内の部活動が中止となった影響は相当に大きかったようだ。主将の玉城俊輔(3年)も苦悩と模索の日々を回顧した。

「コロナの影響で練習時間も少なく、インハイが終わってからは練習ができない状態が長く続いた。それでも3年生が多く残ったなかで、みんなで声かけながら頑張って、休みの期間中はひとりでボールを蹴った。一人ひとりが休み期間中に努力し、全体練習が始まってからは厳しいトレーニングもみんなで頑張った。そして選手権予選で一戦一戦、成長してここまで来れました」
 
 玉城監督の言うとおり桐光学園戦でも「やれることはやった」。劣勢に立たされながらも、玉城を含めた最終ラインはチャレンジ&カバーを徹底し、仮にDF陣が突破を許しても最後はGK仲村太希がビッグセーブを連発。前半は相手に10本のシュートを打ち込まれながらも無失点に抑えたのだから、粘り強さが指揮官の心に響いたのも頷ける。

 さすがに耐えきれず後半13分にCKから失点。結果的に1点に泣いたが、主将の玉城は清々しいコメントを残した。

「苦しい時期のほうが長かったですけど、全員でここまで頑張って来れて本当に嬉しいです。最後、ピッチに立てなかったメンバーもいますが、みんな応援に来てくれて、自分たちは結果では負けてしまったんですけど、しっかりプレーで表現しました。3年間、保護者のおかげでここまでやれたと思っています。最後は『ありがとう』という気持ちを伝えて、笑顔で沖縄に帰りたい」

 開会式では日本協会の田嶋幸三会長が「結果に関わらず、グッドウィナー、グッドルーザーであってほしい」と高校生にエールを送っていた。逆境のなかで成長して31年ぶりの選手権切符を掴み、全国の舞台で死力を尽くした西原イレブンは、まさしく"グッドルーザー"だ。

「この経験はこれからの人生で生かされていく」

 玉城キャプテンの言葉を胸に刻んで、西原の選手たちは笑顔で沖縄に帰還するはずだ。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
 
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