Jクラブ初の挑戦。川崎がベトナムでサッカースクールを開校させた理由

2021年12月21日 本田健介(サッカーダイジェスト)

新たなプロジェクトをスタート

ベトナムでJクラブ初のサッカースクールを開校させた川崎。新たなプロジェクトをスタートさせた。写真提供:川崎フロンターレ

 2021年も圧倒的な成績でJ1を制し、連覇を果たした川崎。王者としてJリーグを引っ張るクラブは先日、海を越えた場所で新たなプロジェクトをスタートさせた。

 12月6日、ベトナムでJクラブ初のサッカースクールを開校させたのである。

 川崎は元々、現地クラブや人々と交流を深めてきた。2013年に「東急ビンズンガーデンシティカップ2013」でトップチームがビンズンFCと対戦(1-1のドロー)して以降、翌2014年にはサッカークリニックを現地で開催。同年から17年まで川崎U-13はベトナムに遠征し、さらに2018年から2020年には川崎U-13を含め日本からも数チームが参加した「ベトナム日本国際ユースカップ U-13」の企画、運営なども行なってきた。

 そのほかにも2015年から19年の国際交流基金アジアセンターサッカー交流事業(現地クラブへの指導者の短期派遣、日本への招聘など)や、2017年から19年のダナン越日文化交流フェスティバル(サッカークリニック、国際ユースカップへの川崎U-12の出場)、2018年から20年の児童養護施設への訪問(ベトナムダナン市・ビンズン省)など活動は多岐に渡る。
「これまでフロンターレとして現地で多くの活動をさせていただき、次の事業をと考えた時にスクールをやってみようという話になったんです」

 そう語るのは海外事業推進プロジェクトを担当する池田圭吾氏である。池田氏は前述した「ベトナム日本国際ユースカップ U-13」の開催などにも尽力し、今回のサッカースクール開校を進めてきた。

 プロジェクトが本格的にスタートしたのは2020年の秋頃だという。そこから約1年で実現に漕ぎつけたが、本来の開校は今年9月を予定していた。もっとも舞台となるベトナム最大の商業都市ホーチミン市の隣に位置するビンズン省は、新型コロナウイルスの感染拡大によって今年7月半ばから2か月ほどロックダウン。そのために3か月後ろ倒しにした12月に開校する運びとなったのだ。

 それでもこれだけスピーディに事が運んだのは、クラブとしてベトナムでの活動の積み重ねがあったからこそで、今年5月に基本協定を締結した東急株式会社の子会社であり、ビンズン新都市の開発を行なうBECAMEX TOKYU CO.,LTD.(ベカメックス東急)のサポートがあったからこそである。

 現地で理想的な街作りを目指すベカメックス東急とは、ベトナムでのサッカーの普及、質の高い選手の育成、サッカーを通じた地域貢献、ビンズン新都市の未来を担う子どもたちの成長を支える場を提供するという目的を共有。タッグを組んでいる。

 さらに現地チームのベガメックス・ビンズンFCとも協力関係にある。同チームはアカデミー組織は有しているが、スクール活動は行なっていない。そのため両者の動きが重なることもなく、川崎のスクールで発掘した人材をベガメックス・ビンズンFCのアカデミーへ輩出する流れも今後、築けるかもしれない。
 

次ページ“開拓精神”を持って。

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