名門・浦和レッズユースはなぜプレミア最下位に沈んだのか。熱血監督とともに描く再建へのポジティブな展望

2021年12月16日 河野正

「安全第一の消極的なプレーになってしまった」

プリンスリーグへの降格が決まった浦和ユース。中学年代にもタレントが多く、来季以降の巻き返しに期待がかかる。写真:河野正

 浦和レッズの下部組織のひとつで、育成年代の"長男"に当たるユースチームが、今季の高円宮杯U-18プレミアリーグEASTで最下位となり、来季はプリンスリーグ関東1部に降格することが決まった。プレミアからプリンスへの陥落は、2013年以来9年ぶり2度目となる。
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 19年5月から指揮を執る浦和OBでもある池田伸康監督は、「なかなか結果が出ないことで、安全第一の消極的なプレーになってしまった。1週間の練習とミーティングで課題を改善しようとしたが、選手にうまく伝わらなかったのかもしれない」と降格を残念がった。

 4月3日に開幕した今季、浦和はスタートダッシュに失敗する。初勝利を挙げたのが10月3日の大宮アルディージャU18戦で、開幕から9試合もかかってしまった。この大宮戦で1回目の対戦が終了し、2巡目を迎えた10月9日の横浜FCユース戦から、11月21日の横浜F・マリノスユース戦までに喫した5連敗が痛かった。

 この5試合で5得点、15失点という数字が示すように決定力不足に加え、組織的な守備が完成されていなかったようだ。池田監督は「同じような戦況で、同じようなミスから同じ時間帯の失点ばかりだった」と振り返る。

 コロナ禍で延期された対戦カードも多く、チームによっては試合数にばらつきが出て、浦和など7チームが18試合を消化し、優勝した青森山田高は最少の16試合。9位で残留した市立船橋高と横浜が17試合だ。18試合戦ったチームの中で、浦和はFC東京U-18の17点に次いで少ない18得点にとどまり、失点は最多の38を数えた。

 12月5日の大宮戦に1-2で敗れて降格が決まったが、勝てば市立船橋高との最終節が残留を懸けた大一番になっていた。降格が決まっていた試合とあり、士気を高めるのは難しかったはずだ。
 
 しかし浦和は立ち上がりから前へ縦へと進路を取り、左MF田上亜璃(2年)が敵陣深くに進入して鋭いシュートを放てば、指揮官が一番名前を挙げて鼓舞していた右MF早川隼平(1年)も、外から豪胆に攻め込んで好機を作った。

 優位に進めながら前半を0-0で折り返したが、後半12分に先制する。今季のルヴァンカップ予選リーグ第3節の横浜FC戦でフル出場し、すでにプロ契約しているDF工藤孝太(3年)がロングパス。預かったFW伊澤壮平(3年)が左足で蹴り込んだ。33分には伊澤の左クロスにMF堀内陽太(2年)が合わせて加点。守っても忠実に粘り強く応対し、2-0で快勝した。

 堀内は1試合平均で約14キロという圧巻の走行距離を誇るボランチだ。「今日はチーム一丸となって攻守にいい試合ができました。来年は練習から戦術を突き詰め、結果にこだわって絶対に1年でプレミアに戻りたい」と決意を示し、「池田監督は熱い人で、そばにいてくれるだけで心強い」と言葉をつないだ。

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