「拍手も感じたけど悔しい…」決勝弾で万雷の喝采も、祝福ムードとは裏腹だった宇賀神友弥の胸の内

2021年12月12日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

「まだまだ自分を魅せられるぞという感覚もあった」

決勝弾で浦和の決勝進出に貢献した宇賀神。(C) SOCCER DIGEST

[天皇杯準決勝]浦和2-0C大阪/12月12日(日)/埼玉

 ヒーローの胸の内は、決して幸福感に満ちてはいなかった。

 天皇杯準決勝の浦和レッズ対セレッソ大阪は12月12日、埼玉スタジアムで行なわれ、浦和が今季限りで退団が決まっているDF宇賀神友弥の決勝弾で勝利を収め、3年ぶりの決勝進出を決めた。

【PHOTO】浦和2-0C大阪|漢・宇賀神が先制弾!浦和が決勝進出で大久保は20年の現役生活に幕
 決勝弾となるゴールは28分、明本考浩のパスを受けた宇賀神が右足を一閃。「ゴールの軌道が見えた」というシュートはC大阪守備陣を切り裂き、激しくゴールネットを揺らす。「宏樹に『もっと煽ってください。会場盛り上げてくださいよ』と言われた」と明かすように、ゴール直後はチームメイトの祝福があるまでノーリアクション。その後、酒井の求めに応じるように、浦和サポーターに向かって「盛り上がっていこうぜ」と言わんばかりに両手を振り上げてみせた。

 負ければ浦和での最後となるゲーム。古巣への想いは複雑だった。テレビの勝利インタビューでは「今日の試合、契約満了にしたことを後悔させてやろうと、とにかくそれだけを考えてピッチに立ちましたそして、今日このバックスタンドを見て、絶対この人たちと国立に行って、タイトルを獲るという強い気持ちを持って試合に挑みました」と明かすと、試合後の記者会見でも同様の言葉で胸中を吐露した。

 そして、61分に交代でピッチを去る際には、サポーターから万雷の拍手喝采で送られたが、ここでも宇賀神の胸の内にはスタジアムの祝福ムードとは裏腹な思いがあった。

「イエローカードをもらっていたので仕方ない交代だったのかなとも思うが、まだまだピッチに立っていたかった。拍手も感じ取っていたけど、やはり悔しいという気持ちが大きくて。まだまだ自分を魅せられるぞという感覚もあった」

「(所属した)12年間で初めてじゃないか」というほどの盛大な拍手は、宇賀神の脳裏に深く刻み込まれたはず。それでも、まだまだピッチで自身の存在価値を証明したかったという背番号3にとって、不完全燃焼の想いを晴らすチャンスは残されている。

 19日の決勝に向けて、宇賀神はタイトル奪取への意欲とともに、「ピッチに立つのであれば、(C大阪戦と)同じ気持ちで立ちたい」と明かし、改めて今シーズンに味わった悔しさをゲームにぶつける決意を示した。

取材・文●長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)
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