群馬ライバル対決で放った10番の輝き! 前橋育英の左のエースが魅せた決勝アシストの凄み

2021年11月24日 安藤隆人

短時間のうちに、実に判断を3度も変えてゴールを演出。2年ぶりの選手権出場を引き寄せる

決勝ゴールをアシストし、前橋育英を選手権出場に導いた笠柳。来季の長崎入団が内定している。写真:徳原隆元

 今年に入って急成長を遂げた左のエースが重要な一戦で大仕事をやってのけた。

 選手権群馬県予選決勝、2年ぶり24回目の選手権出場を目指す前橋育英は、同じプリンスリーグ関東に所属し、そこでも上位争いを繰り広げる最大のライバル、桐生一との大一番を迎えた。戦前の予想は全くの五分。インターハイ予選は前橋育英が辛勝を収めており、桐生一はリベンジへの想いを胸に、この一戦に臨んできた。

【選手権予選群馬県決勝 PHOTO】前橋育英 1-0 桐生第一|白熱の強豪対決を制した前橋育英が2年ぶりに選手権の舞台へ
「1点差のゲームになると思っていた」と前橋育英・山田耕介監督が語ったように、試合は立ち上がりから双方がチャンスを作り出し、かつ中盤での激しい潰し合いを展開するハイレベルなゲームとなった。

 両チームともに局面でショートパスとミドルパスを駆使したハイテンポな崩しを見せるが、それを最終ラインとボランチが鋭い読みと寄せで凌ぎ、マイボールにするとビルドアップをしてボールを前に運んでいく。内容も濃く、まさに決戦にふさわしい試合は、スコアレスのまま時間が経過していった。

 試合が動いたのは後半13分、前橋育英はカウンターを仕掛けると、この試合は左ワイドに張ることが多かったMF笠柳翼が中に絞りながら動き出した。

 そこにプロ注目の2年生ボランチ徳永涼から浮き球のパスが届くと、ボールを受ける前に笠柳は一度首を振って周りの状況を把握した。
「最初はワンタッチで斜め前を走っていた(FW守屋)練太郎に渡そうと思ったのですが、僕のマークの相手の右サイドバックが遅れてきていたので、不正確になってしまうかもしれないワンタッチより、ここはボールを収める時間があるので、きちんと次のプレーがしやすい足もとに置こうと判断した」

 笠柳は相手のCBのギャップを狙っている守屋の動きを視野に入れながらも、バウンド側を右足アウトフロントでトラップをして収めると、次の瞬間に状況が動いたことに気づいた。

「このままドリブルで打ち抜いていこうかなとも思ったのですが、もう一度前を見たら練太郎に対して、相手の左CBの3番が中に絞り切れていなくて、遅れて練太郎とボールの間に入ろうとしているのが見えたんです。最初は練太郎に対して浮き球のボールを送ろうと思っていたのですが、そうなると最悪3番に追いつかれてしまう危険性があったので、練太郎の足元もしくは、彼の前を少しでも横切るような強いボールを出せば、3番は完全に練太郎の背中を見てプレーしないといけなくなるので、これならあいつが完全に相手DFの前に出て抜け出してくれると思った」

 短時間のうちに、実に判断を3度も変えて、最後は最良の選択肢を選んだ。スリータッチ目に笠柳の右インサイドから放たれたスルーパスに守屋が抜け出し、飛び出してきたGKを冷静に見極めて、ダイレクトでゴール左隅に突き刺した。
 

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