失点直後すぐにボールを抱えて――成岡輝瑠の“無意識”の行動が、残留を目指す相模原の強力な推進力に

2021年11月20日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「みんながいれば大丈夫だっていう気持ちがある」

「考えながらやるより、どんどん走ろうって」。次節の愛媛戦に向けた練習でキレのあるプレーを見せていた成岡。コンディションは良さそうだ。写真:滝川敏之

 誰かに言われてやっているわけではない。いつ頃からそうしているのか、記憶を辿ってみても思い出せない。

 前節のファジアーノ岡山戦で、SC相模原は2-3の逆転負けを喫した。開始4分の松橋優安の得点で先制も、前半のうちに追いつかれる。50分に途中出場の安藤翼のゴールで再び、突き放したが、67分に同点とされ、その後に試合をひっくり返された。

 3点目を決められた直後だ。すぐさま成岡輝瑠はボールを拾い、センターサークルへと駆け出していった。しばし、うなだれていても、おかしくないシチュエーションだったが、19歳のMFは、すぐに切り替えてプレー再開を急いだ。

 そうした振る舞いは、この時ばかりではない。本人も「けっこう、やっていますね」と言う。「空元気じゃないですけど、勝手にやっています。何も考えずに。なんでしょうね。自分も分からないです」と笑う。

 失点すれば、もちろん成岡自身も気落ちする。だが、そうした感情に支配されているわけではない。意識はすでに別のところに向けられている。

「落ち込んで、何かが変わるわけでもない。失点してしまったことに変わりはないし、落ち込んでいても良いプレーはできない。1点取られても、1点取ればいいと僕は思っているので」

 失点という事象を、誰かのせいにはしたくない。チーム全体で共有すべきものだと捉えている。

「最終ラインの選手たちは、失点してしまうと、どうしても自分たちの責任みたいな感じになると思います。でも、点を取られても、点を取っていれば勝てるわけで、前の選手が得点できていないからとも考えられるし、(中盤の)自分がゲームをコントロールできていないせいで失点したとも思う。後ろの選手だけが悪いわけではない」
 
 そもそも「点を取られて、しゅんとなるのが嫌」なタイプだ。「下を向いていても、しょうがない」という考えが根底にある。

 降格圏に沈む相模原において、難しい状況に置かれても常に前を向いてファイティングポーズを取り続ける成岡のその姿勢が、強力な推進力になるのではないか。

「良いサッカーをしていても勝てない試合が多いんですけど、だからといって、自分たちが受ける身だと思わないし、どんどんチャレンジしていく身だと思っています。

 失点はよくないけど、自分たちは良いサッカーができているので。失点しても、自分たちなら取り返せる自信というか、みんながいれば大丈夫だっていう気持ちがある」

 シーズンは残り3試合。残留の可能性は十分にある。「本当に、チームが一丸となってやるしかない」と成岡は気を引き締めた。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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